My Mother said that I never should play with the gypsies in the wood, The wood was dark; the grass was green; In came Sally with a tambourine. I went to the sea-no ship to get across; I paid ten shillings for a blind white horse; I up on his back and was off in a crack, Sally tell my Mother I shall never come back. -Songs of Mother Goose-
2013年2月4日月曜日
お母さん、どこに行きたい?
息子が先に帰国する。私は明日、帰国する。
スキポール空港で、遥がしきりに悔やんでいる。
「仕事を休めないんだろうと思って、こんなスケジュールにしちゃったけど、
健の自由がきくなら、明日二人でいっしょに帰れるようにすればよかった」
でも、ひとり旅も、それはそれでいいものなのだ。
あの、わけがわからず、外国語も話せない、見知らぬ人のなかに一人でいる感じ。
私は機上で、ひまを持て余したりするのも、けっこう好きである。
「お母さん、今日はこれからどこに行きたい?」
弟がKLMの搭乗口を入り、税関を通り抜け、視界から消えると、娘がきく。
ああそう言えばそう。私の旅も今日で終わってしまう。
明日の朝は、私が出発するのだ。
遥ともお別れである。
今日も、残り時間はあと半日、荷造りもあるし。
「アムステルダム」
と私は言う。
「まえ連れてってくれたじゃない、あそこがいい。あの預言者の絵も見られるし」
「ああ、国立博物館ね。エレミア」
「そうそう、預言者エレミアを見て帰りたい」
2010年の夏、あの日は一日、ひどい雨降りだった。
博物館にむりやり入って、
あとは傘もないので、遥とふたり遊覧船に乗って運河めぐりをしたっけ。
私たちを乗せた船にも、運河に係留する数々の豪華船にも、
それからアンネ・フランクの家のまえの長い行列の上にも、
すべてをずぶぬれにする雨がずーっと降っていた。