萱野さんの小さな黄色いクルマが、坂をぐるぐるまわって走り、
高台にあるきれいで広いレストランで、お昼ごはん。
そこには、いろいろな野菜だとか手芸品だとかが置いてあり、
私はレストランに入るまえ、萱野さんの手提げを借りて、ついつい買い物をした。
いちごだとか、カブだとか、にんじんだとか。根生姜も買った。
べつにいそいだわけじゃないけれども、なんとなく私ってせっかち、
萱野さんはというと、のんびり売り場のあれこれを見て歩いている。
「あなたは買わないの?」ときいたら、
「私は食事が終わってから、帰りに買います」という。
そうよね、いま買うと重たいしじゃまよねー。
萱野さんは、あれもある、これもいい、おいしそうとか新しいとか、言ってる。
私はそうか、そうよねと、どうする気なのかついつられちゃって、カブなんか買う。
新鮮で、小さくて、かわいらしくて、安いカブなのである。
ふたりで話しながら食事をして、ゆっくりゆっくりハーブティを飲んだ。
雲のむこうの富士山をながめる。日差しがつよくてこまるほど温かかった。
帰りに萱野さんと私はまた、レストランを出て、小さい売り場のほうへ。
私なんかさっき買い物をしちゃったのに、まだ、なにか買えたらたのしいわけで、
無農薬、小振り、新鮮、安い・・・大根はうちにあるからいらないし、とか。
でも、びっくりしたことに、ほとんどのお野菜がいつのまにか買われて、
いまじゃもうあとかたもないのである。
苺だって、あんなにあったのに、ひと箱しか残っていない。
めったに買い物客が来ないような場所だという気がしていたのに、
いつのまにか小人が大勢やってきて、ばたばた買って行っちゃったのか、
腑に落ちない・・・。・・・あーあ。
カブの話。
まず、買い置きの豚肉によく下味をつけ、フライパンで焼いて、お皿に分けた。
そのフライパンに作り置きの出し汁をけっこういっぱい加え、
切り目を入れたかたい小さなカブを葉もいっしょに茹でる。
大蒜に生姜に塩コショウに、ターメリックになんのかんの。
固めの小カブはお醤油をかけると、びっくりするほどおいしかった。
このカブなんか、箱の中にたくさんあったけど、萱野さんって買えたのかな・・・?