My Mother said that I never should play with the gypsies in the wood, The wood was dark; the grass was green; In came Sally with a tambourine. I went to the sea-no ship to get across; I paid ten shillings for a blind white horse; I up on his back and was off in a crack, Sally tell my Mother I shall never come back. -Songs of Mother Goose-
2014年1月18日土曜日
見ていたら童話
クルマの中から外を眺めていたら、白い髭を長く顎から下に流したおじいさんが、
小さいスクーターに乗って走っていた。まるでアザラシ。おじいさんは茶色のオーバーを着て
灰色のリュックをキュッとしょって、こんな多摩市界隈を行進するにしては、
じつにじつにオンボロにして古典なのだった。ああ、どこからどこまで走っていくのだろう。
手入れをしきらない蠟梅の花が咲くくたびれた可愛い庭が見えるようだ。
そこにはおばあさんが待っているのかしら。いいえ、おそらく今はもう誰もいないのだ・・・。
私の頭は、おじいさんのふくらんだ白い髭とスクーターに見とれて、すっかり愉快になり、
こんどは歩道を行くひとりの紳士が、海辺から来たカメに見えてしまう。
黒いスーツを着こんで首をすくめ、風をよけてすごいネコゼになった、あれが甲羅だ。
暖かそうに見えるのに震え上がっている骨格のしっかりした丈夫な中年。
木の葉が寒風にふるふる揺れて、その上に日が差して、どうしても寒い冬である。
こんなおとぎ話みたいなことは続かないものだなーと思う。
どんなに目をこらしても、それからは人間が人間に見えるだけのことだった。