洗濯物を乾かすことで日が暮れた。
家の北側には昨日も今日もおとといも、
クリーム色のペンキ?を壁面に刷毛で塗る人がやぐらの上にいる。
作業着がくたくたにくたびれて、泥とペンキだらけ。
どの人もあたまに巻いた手拭が汚れて、マスクなんか顎の下だ、
規則通りやっていたら働けない、息だってつけないだろう。
シンナーがものすごく匂うから、窓もドアもきびしく封印されている。
こんな作業を何人もの人がやっていて、よく見れば苦しい顔である。
なんて過酷な仕事だろうか。こんな毒々しい作業をして、
休憩や健康被害防止手当は保証されているのだろうか。
こんな労働を長時間やって当然みたいな。
いや、まさかそんなことでも無いのだろうか。
私が小さかったかったころ、両親が建てた家はすごく小さな木の家だった。
職人さんがペンキを床に塗っていたけど、気にならなかった。
いい匂いだという気がしてそばにいたりした。ニスのにおいがお気に入りだった。
住宅金融公庫で借金をして建てたという家。
ながいあいだかかって、借金がなくなるまで大変だったときいたけど。
今日、庭のある南側は、塗装が終わったからか、人影がない。
ガラスに張り巡らしたポリエチレンの覆いもなくなっている。
私は、外に出るなという張り紙のついたガラス戸を、開けっ放した。
撤去されて網戸なしの生活なのに、
シンナーのにおいが建物をどっと取り巻いているので、
鳥もこないし蚊もこない。けっこう・・・いいのかなあ。
昆虫だって野良猫だって、おそれをなして寄り付かないのだ。
ニンゲンの場合は、まあいいのかしら。
暗くなるまでガラス戸をあけっぱなしにして、
Tシャツだの上っ張りだのをハンガーにかけて干した。
とっかえひっかえ・・・、もうほかのことはなんにもできなかった。
鉄筋コンクリートに住んでいる人は、乾燥機つきの洗濯機を買うらしい、
でもたとえ中古でも、いま車と乾燥機なら、うちはクルマ。
私って苦笑いしたことがないな、と急に気がついた。
ど単純。怒るか笑うかそれとも悲しむか。微笑というのもしないんじゃないの?
いやまさか。微笑ぐらいしてるわよ。
とかそう思ったりしてよくよく見ると、
作業する人達は、土曜日に私が買った「中古のスズキ」みたいな車に乗っている。
どうやら中古のスズキで、ここのところ、うちの団地の敷地は混雑だ。