夜風の音を聞いた。西風がどこかでZ型に東へと進路を変えるヘンな日。
朝からすこし暑くそのくせ私は寒い、血が私から撤退しはじめているらしく
どうしても温まらない。
オーバーを着こんで、そうすると汗をかいて 、暑いけれど寒いわけで。
寒気というものは、私の場合、いまや自然の冬からやってくるのではなく、
しもばしらという「霜柱」そっくりのなにかが自分の身に発生したわけである。
こういうものにヒトは勝てるのだろうか?
大橋Mr.のお向かいに腰かけてお話をきいていると、
心配と不安が遠ざかって、私はのんびり空想しはじめる。
いまでは現実は綿菓子のようにさだかではないもの、
全てをちいさくちいさく乗り越えて、と。
そんなふうに思うからには、そんなふうになるかもね、とか。
老人社会だというけれど、
どこへ行ってもみんながそうだということは、温かいことでもある。
はははは。だって今日の私って、午前中老人会で午後大橋家だったのよ?!
夜風がさっきから、ブイブイ、旅の音をたてている。
どこにいくのか知らないし、ずっとうちの前にいるのかもしれないし。
あのね、今日はいい日だったし、傷つかない日だったのよ。
追記 今日こそ忘れものをしないぞとかたく決心していたのに、
帰宅すると覚え書きした紙がみつからない。
代わりに大橋杖代さんが手渡してくれたメモがでてきた。
「小説となりのトトロ」を贈ってくださる方々の人名。
あーあ、手元ごちゃごちゃ。
自分の「なぐり書き」の方を杖代さんに渡して、
彼女のメモを返さず、Mr.からいただいた本といっしょに
家に帰ってきちゃった・・・。