2014年10月2日木曜日

映画・アンナプルナ南壁7400mの男たち


必見・・・と思うわけは、気持ちが安らぐ、明るくなるから。
新聞の映画評をあまり信じないクセがついているけれど、
海田恭子さんの「今週の注目」の文章に牽かれて、ふ~っと有楽町まで出かけた。
掃除はした、洗濯もした、食材は帰りに買っても間に合う、さあ電車に乗ろうという感じ。



アンナプルナで遭難したスペイン人登山家を救出するために集まる12か国の登山家たち。
映画は救助に参加した12人を10カ国にわたり、たずねて歩く。
「自宅やジム、職場といった日常の場で淡々と語られる
登山家たちの言葉が興味ふかい」
「見るものの好奇心と探求心をかきたてる」
 と海田さんは書いている。

「それはじぶんが力の限り生きられる場所を世界のどこかに、そして心の中にも
持っている人ならではの信念の強さだ。」
「突き詰めれば突き詰めるほど、
自分の生と他者の生は同義に近づくのかもしれないと思わせられる」

そういうものを見たくって、知りたくって出かけた。
ああ、素晴らしいと見終わって思った。

新宿で食材を買い、荷物を足元に置いて帰りの電車の中でつかれて眠ってしまった。
ふと気が付くと私のとなりに、
スマホの画面に向かって、もうとにかく喋りどうしに喋っている人がいる。
「たてこが、たてこが好きなんだわかるかたてこ、だめだといってもたてこが、たてこのことを
たてこが…たてこたてこ。」
彼のスマホの画面を思わず見ると、画面は文字でいっぱい。
スマホって、文字と問答が同時にできるもんなのかしら。
私の旧式の携帯電話だとそんなことは不可能だ。
「見たなっ」というふうに彼に睨まれたような気がして、どこかで席替えをしなきゃと思う。
向かい側の座席の人がこっちを見て私を見る。この人はオカシイんだ、やっぱり。
眠ったふりをする。次の停車駅はなかなか来ない。聞けば聞くほど不安になる。
たてこがそうするならたてこの都合なんか、うるさいっ、たてこたてこ聞けっバカ…

私の気分はさっき見た映画とは反対方向に動揺してしまう。
海田さんが言う「好奇心と探求心」をまったく掻き立てられない方向へと。

彼はすごく不幸なのだろう。
たてこにすてられたんだろう。それともたてこさんは漫画のヒロインなのかしら。
彼は職場でものすごくバカにされたり苛められたりしているのかもしれない。
彼の親御さんはずいぶん、びくびくしちゃってるだろう、この人に。

こんなに孤独な人が、最近になってずいぶん増えた。
私が政府の閣僚なら、こういう苦しい人々の増加を、
「これは自分たちのせいなのだ。自分に課せられた社会的責任なのだ」
そう思うはずである。

生きるということが、拷問のように感じられない世界がある、とこの映画は教える。
自分を鍛えぬいて生きることの必要を誇り高くかかげて。

ぜひ見に行ってほしい。ヒューマントラストシネマ有楽町。夜7時からでも見られる、
有楽町駅から2分だし。(私は1時25分のチケットを買いました。)