2015年6月13日土曜日

閑話休題


毎朝5時まえに目がさめてしまう。
小鳥が、いつまでもくりかえして楽しげな声で鳴く夜明けだ。
耳をすませば、ほかにも鳴いている鳥がいる。
地上は小鳥の声でいっぱいなのかもしれない。
そんなふうに感じたことのない暮らしだったと思う。

そんなふうな・・・なつかしい思い出はひとつだけ。
月のきれいな晩だった。
家に帰ろうとして先生のお宅をでた。
路地を出たところがそのころは畑で、黒い土ばかりが畝になって広がっていた。
そこにガマガエルが一匹いるのがわかった。
住宅地のなかの畑は、坂道のとちゅうにあったので、コンクリートで土留めしてあり、
ガマガエルと私は目が合いそうだった。
私は目をこらしてガマガエルを一心に見たが、
ガマガエルのほうは私に見られているだけのつもりらしかった。
おそらくは、かの生き物も、月を見物するのかもしれない。
そういう考えがとりとめなく浮かぶ深夜の、

あの大きなカエルと空の月とのあいだの長い素晴らしいほどの距離!

都会育ちとは仕方のないもので、
そんなこんなをだいじにせず、ひたすら本の世界に逃げ込んで、
今日の日が来たのだと、
私は思う。