2013年10月27日日曜日

泰尚の倒産


泰尚永山店が倒産したというニュースが悲しい。
9月18日に破産手続き決定。
多忙をきわめた夏で、「泰尚」に足を運ぶことがなくなっていたあいだの出来事。
アッと言う間の。
疲れて夕食の支度がもうできない時、息子とふたりで出かける、
板前さんの面構えがシャキッとして、気持ちのよい店だった。
居酒屋ふうの、うどんがおいしく、魚料理がおいしい店だった。
家族づれが大きい座卓にいつも二組ぐらいいたりする。
私たちはカウンター席の後ろの小テーブルによく陣取った。
そこだと人のジャマをしないし、品書きも見やすいし、板前さんも見えるのである。

なんでこんなに自分は悲しむのだろうと、
記事にびっくり仰天して以来、
ブログに思うことを記す気力もない私の9月と10月に
時々考えた・・・。

常連というわけでもなかったのに、
勘定をすませて店を出るとき、泰尚の主人がカウンターごしに私を見てくれる。
だから「ご馳走さまでした」とか「おいしかったです」とか、私も言えたのだった。
今でもこの人の容貌、料理人らしいしっかりして頼りになりそうな顔が目にうかぶ。
そんなことも私たちが「泰尚」へ行く理由のひとつだったなあと思う。
悲しいのは、「泰尚」の破綻と法的整理があまりに短期間のうちに決定したことである。
ああ、まるで自分たちの運命を見るようなのだ。

アルバイトの男子学生が誇りもなにもない悪戯をツイッタ―に流したのが今年八月上旬。
営業をとりやめ、売り上げがなくなって破産したのが翌月の一八日・・・。
私たちの国では、こんなふうな馬鹿げた若い者の軽率で、
昔ながらの努力が築いた店舗がアッというまに破産してしまうのか。
助ける商工組合も、銀行も、社会保障も、もうなんにもないということか。
日本資本主義には庶民的社会保障が皆無であって、
金持ちが行く店とはちがうから、
三千三百万円を肩代わりしてやろうという客も見つかりっこない。
家族で働いているというあの雰囲気、空間、何人かいた若いアルバイト。
多摩というコンクリートの街で、人情の在り処がなかなか感じられない場所で、
「泰尚」は湯気が立ち、働いている人たちがそこにいる面白さのただよう店だった。
潰れるなんてユメにも思わなかった。

こんなことってありだろうか? 彼らはこれからどこに行くのだろうか?
台風に直撃された各地の惨状を見るたび思う。
治山治水は政治の根幹ではないかと。
そんなことを思うばかりなのが悲しい、本当に悲しいそういう夏だった。