2018年4月1日日曜日

3月のおしまいの日


春が好きなのに苦手。
日常のことならなんとかできるけれど、
仕事に類することはなんとしてもできない。
とうとう昨日は、3月の31日で、書類の山を床にばらまいて
途方に暮れて半日がすぎた。
あーあとぐったり、ヒデコちゃんに電話をかける・・・。
ヒデコちゃんは私のひとつ年上の義妹、
別れた夫の妹で、ご縁が切れることになってしまった亡き姑に似て、
どんな人の苦境やさびしさにも、
春の訪れのようにうらうらと応えてくれる
めずらしいような性質のもちぬしなのだった。

夫と別れる決心をして、
それを姑に話す。
断崖からとびおりる、ということとは違うけれど、
でも、ヒデコちゃんに電話でおねがいした。
お義母さんにつぎこがお話があるけれど、
ヒデコ付きがいいか、つぎこだけがいいか、きいてもらえない?
・・・ヒデコ付きがいいと・・母が言っていると、
まもなく電話で知らせてくれた。
遠慮がちな暖かい声だった。
敬語と気持ちのいい低音の。

そんなことをいつも思い出すけれど、
今日は驚いたことに、いつになく元気な声が
「主人から知らせがあったの?」
電話の向こうでヒデコちゃんがヘンなことを言う。
「わたし、入院してるのよ、病院にいるの!」
ヒデコちゃんはもうずーっと病気で、
こちらからうかがうのも迷惑だろうかと気兼ねしてしまい、
もう何年も何年もあえずにいた。
電話で話すたび今度こそ会いに行くから、と私は言うけど 、
そんな時はこない、くるわけがないのである。

でも、今日は入院している!

病院にいるの?
じゃあ、今から行く。これからすぐ家をでる。
よかったあ、なんの約束もない日なのよ。

病院の住所をおしえて。
電話番号も教えて。
病室の番号を教えて。
お見舞いになにがほしいか教えて。
戸塚ね、とつかって、どこらへんだったっけ? 
「なんにもいらないのよ、それが」
ゆっくり、ヒデコちゃんはそういうのだった。
「急に血糖値が500になってさ、入院させられちゃったの」
血糖値? 糖尿病なの?
糖尿病であなたが入院するの?
えー、なんで、おかしいじゃない?
・・・糖尿病ならば、私がずーっと先輩なのに。

病院に5時半ごろ到着。
やっとあえて、ずーっとおしゃべり。
よかった、会えちゃった、とそればっかり。