2014年11月24日月曜日

メタセコイヤ通りの初冬


庭先をながめると、メタセコイヤが、堂々とした大木ごと、
すばらしい赤茶色に変わっている。毎朝見とれてしまう。
庭先の柿の木の落ち葉を、取り除かなくてよかった。
あの落ち葉の下では、スノー・ドロップや鈴蘭や水仙の新芽が、
ちょっと温かい思いをしているはずだ。
これから雪が降って、それから、それからと、とりとめもなく春を思う。

植木鉢のシソが、どうしてか盛大にゆれる。
めずらしいこともあるものだと見れば、小さな茶色のあたまがしきりに見え隠れしている。
雀だ。スズメが何羽かきているのだ。すぐそこのシソの実を食べるの、雀って?

ロシアのペテルブルグで娘とふたり、屋台でホットケーキみたいなものを買い、
傍らのベンチに腰かけたら、スズメたちがもう必死で、ものほしそうに寄ってくる。
知り合いになりたくて手をさしだしたら、おどろくまいことか、ケーキのかけらを
私の手からとっては飛んで逃げるのである。
あの時は、たしかにペテルブルグのチープサイドの小さくて筋張った足にさわった。
ヒトの手から食べ物を受け取るスズメは初めて。ほんとうにめずらしかった。
遥が、ロシアのスズメは飢えきっているから、人間をこわがってなんかいられないのよ、
と言ったっけ・・・。

チープサイドはロンドンのスズメで、ドリトル先生の物語の名脇役である。
いかにも下町のスズメらしい、ぴったりの命名ではないか。
井伏鱒二の翻訳で、彼奴はペラペラペラペラ、いなせなべらんめえ調でしゃべる。
私の子ども時代の本を、今でも、家ではだれかが時々読んでいる。

ところで、おどろくまいことか、という日本語はこういう使い方をしてよかったのかしら。
こんがらかって、なんだか、よくわからなくなっちゃった。