2018年9月10日月曜日

思い出


ナイン・パーティーに行く。

長男がトーク。古本を売ること40分の見世物、語る芸能である。
途中、母親が好きだった画集でと話しながら、ツィルレの古本も売る。
母親とは私だろうけど、ツィルレって誰なのだろう?

やっと思い出をたぐり寄せれば、むかし私は、
その画集を、本棚に並べたままでは子どもにけっきょく届かないと思い、
素朴な、芸術そのものの画集をこわし、
すきなページを切り抜いて、トイレの壁に貼ったのだった。
子ども達の目に、いやでも入るようにと。
・・・桜上水の実家に住んでいた、あの苦しい13年間。

いつ画集を捨ててしまったのか、私の本棚にもう、その本はない。
 何年も捨てられないでいた、たしかドイツの、画家ツィルレ。
だいじなページを切り抜いてしまったから、残骸でしかなくなって。

ハインリッヒ・ツィルレという画家の名前を、自分ではもう思い出せない。
私の人生は、たぶん終わりかけているのだ。
二男が、その本を買って、見せてくれた。
ナインパーティーの帰りの小田急電車の中で。

私は忘れたのに、長男の心に私の気持ちの残像がのこっていた。
あの時は小さかった二男が、子どもの世界、という本の名に惹かれたのか、
・・・さっき、兄からそれを買った。
なんという懐かしい、繰り返しなのだろう。