2019年4月19日金曜日

老後の幸福


最近、私の住む市は、工事の現場だらけである。
あっちでもこっちでも通行規制をしている。
やってきた車を止めてゴーサインの旗をふる人は、初老の人が多い。
時々、自信なげにヘルメットごと首をのばし、これでいいのだろうかと、
あたりをうかがっていたりする。
この人には、この現場に、相談できる人間がいるのかしら。
そういう姿を車の中から見ると、
仕事が変わるたびに、こわくてこわくてたまらなかった自分を思い出す。

灰色の髪の、背高のっぽでメガネの老人が、痛む足を隠して、
不自由を見せまいと歩いていった、なんて絶望的で不幸な様子だろうか。

なぜ、ごくろうさまと報われる権利が、老人たちに、あたえられないのか。
たとえどんな一生であれ、とにかく生き抜いて、昨日も今日も、明日も、
迫りくる病気をかくし、見知らぬ現場で、慣れない道路工事をしているではないか。
そう思う。個人の欠点をあげつらうのではなく、
余生を幸福にくらす準備金を、と思う。