2020年10月23日金曜日

「砂の器」

「砂の器」は、日本映画の傑作で、何度もTSUTAYAから借りて、
見よう見ようとした映画だ。
病気になって、読書だけの毎日。
そのうち、なにを読んでも気持ちが悪くなってきた。
童話だって受け付けられない。
伝記もだめだし、もう、なにもかもが面倒になって、
「砂の器」をまた借りた。
借りたとき、見ないまま返却するかもしれないと思ったけれど、
映画がはじまると、はじまった瞬間から、
これは日本映画の最高傑作だとわかるような作品だった・・・。

人間の宿命を、
世界が資本主義一辺倒になるまえに、
日本が金儲けしか考えなくなるまえに、
日本列島が企業の広告で汚されつくす寸前に、
人と自然を、いかにもこうあってほしいような美質をみせて、
私たちの目前に描いて見せてくれる。
かつての私たちが、
宿命的不幸と運命を抱えながら、
私たちの国、日本の国土を、せいいっぱいに横切っていく・・・。

脚本、製作、橋本忍。
監督、野村芳太郎。
カメラマン、川又昴。
俳優がすばらしかった。どの人もよかった。
丹波哲郎、佐分利信、渥美清、
脇役の、名も知らぬ日本人がまた、名だたるひともよく、無名の脇役だって、
通りすがりの風景をこわさず、山河や海辺、紅葉や雪景色のかたわらで、
なんとも懐かしい。

なんとかして、観てほしい映画だった・・・。