2021年4月29日木曜日

短編『春になったら」「子どもの物語にあらず」

深夜、ふと棚で見つけたビデオをみた。むかしのものだ。
「春になったら」9分と「子どもの物語にあらず」29分。
第二次チェチェン戦争で難民になった子どもを映している、
見るのに40分もかからない小品・・・。

「春になったら」は18歳のむすこティムールの作品。
「子どもの物語にあらず」はお母さんのザーラ・イマーエヴァの制作である。
ふたりはアムネスティ・インターナショナルの招きで2003年の秋、来日。
小さい、ちいさい子どもの目がみた、チェチェン崩壊のありさまである。

それは私が団地の細田さんからきくお話にそっくりだった。
細田さんは88才の喜寿をむかえたばかり。
いまこそ、もう一度、細田さんの記憶を私たちの頭にうつしたいと思う。
私たちは、なぜこんなにみんなで戦争を忘れてしまうのだろう。

細田さんは類まれな老人である。
きのうは生垣のなかに生えてきたシュロをどうにかしようとし、
おとといは藤棚の藤の枝を花が生きやすいように刈り取っていた。
藤の花が夢に出てきて俺を呼ぶんだよなーと山形なまりで言うけれど。

私には、細田さんにどうしても話してほしいことがある。
友だちみんなに細田さんから伝えておいてほしい話がある。
早くそういう機会をつくりたいと焦りながら、
トシをとるばかりの自分がほんとっにまったくなさけない!