2013年12月3日火曜日

こんな時は俳句でも・・・


22時35分にゴミの袋と手紙をもって外に出た
ゴミは団地の金網のゴミ置き場に前もって捨てるのである
手紙はポストに放り込むのである
夜は緊張して藍色、シンとしてかおりのいい冬だ
アキニレの落ち葉をふむ道がグリコのおまけみたいに楽しい

外灯がほわりと暗黒をやわらげ、むこうのほうでは、メタセコイヤが燃えている
メタセコイヤは冬がくると赫赫煉瓦色になって大気をかきまぜる
夕焼けに似合う、赤信号に映える、真夜中の今は外灯と腕を組んで
消防署のダンスパーティーのよう

不意にだれかの家のドアが開く、うわあたいへん、飛んで出てきた青年が、
「なんですか、なんですか、御用でしょうか」
私の周りをニコニコ、丁寧にくっついてまわるじゃないの
ビックリ箱みたいなのでこまるけど
急に現われた彼にぶつかって、「アッしまった」と私が叫んだからか
・・・私ときたら、さっきからメタセコイヤの赤い色のことばかり考えて
ゴミ袋を手にゴミ置き場の金網の前を通りすぎ
重いゴミ袋とふわふわ歩いて、
そのまま角もまがって石の段々も降りて、バス停横のポストまで行くつもりだったみたい
ゴミ袋といっしょに。

それがわかったんだかまるでわからなかったんだか、
青年はぴょんとキツネのように飛んで気合を入れると走って行ってしまった
私は泥棒じゃないし徘徊人でもないし、・・・君はジョギングなのよね真夜中のね
猫はいないかな・・・、猫はいないよと思う
10年以上この団地に住んで、今も見知ぬ青年に出会うなんて
出会いはしてもすぐさま分かれるなんて
今晩はきっと自然で楽しい夜なのだ

ポストまで行く石段は銀杏の葉っぱのせいでバターを塗ったパンみたいだった
きれいだけれどよろしくないね。
ふかふかして、すべって、星のようにも淡い黄色だけれど私が落っこちそう。