2012年3月6日火曜日

花篭のチューリップ


花駕篭に入れる花々。

ブルースターをさいしょにえらんだ。
青い星のような小花をいっぱい。
チューリップはあわいピンクのかすむ白。
それから黄色に緑のまざる、あの人みたいに印象的な蘭の花。
百合をいれましょう、と花屋さんが言った。
・・・白いストック、白いラナンキュラス、それからかすみ草、
花屋さんは白い小手鞠の枝を折っては花々の彩りを整えている。
春めいたやさしい花駕篭。

パチンパチンと花鋏の音がする。
ボーボーとブルースターの花の茎をガスの火が焼いている。
水の落ちる音。
セロファンもぱりぱり。
濃緑の和紙もばりばり。

見送る花だ。
この世から向こうへ旅立つ人のおわった時間を、
無力なまま、ただもうすこし、すこしばかり飾るだけの。

チューリップは、と
花やさんが笑顔で私に、ことわりを言う。
今はまだ蕾みがひらいていないんですが、
あしたかあさってか、チューリップって花がひらく時、
また成長して、丈がすこしのびるんですね。
そうです、これぐらいに、でしょうか。

チューリップは、
伐られて、そのあとも背丈がのびる、成長する。
これからも大きくなって、そうして咲くのだ。
死んで子どもにかえったのかもしれないあのヒトが、
三途の川を元気よく無心に渡っていく、
そのあわいピンクの白い花のような可愛いすがたが、
見えるような気がした。

・・・・・気がすんだのである。