2017年10月4日水曜日

秋の日植物公園で


そよそよと風が吹く。薔薇は三分咲き。
咲いてはいるけれど、まだまだ。
しかしフランス産の真紅のばらなど、風の中で輝くようにうつくしい。
これきれいねえ、と私が言ったら、
「本当にきれい」と大角さんが小型の薔薇の花びらにさわった。
さわるなよと言ってるわよ、フランス産で気位が高そうだもん、
そう言ったら、と私がそう言ったら、大角さんはすかさずポカンと薔薇を殴り、
「生意気いうんじゃないよ」と風のほうに薔薇を追いやった。
その低音がおかしくておかしくて私はふきだした。
なぐったと言っても薔薇はもとのまま、痛くも痒くもない顔で風にゆれている。
彼女は園芸家だ、空き地にいつも草花を育てていたっけ。

さらに歩いていくと、でっかいお化けアロエのそばに、
淡いローズ色したホウキ草が植えてあり、それが大角さんのようなのだ。
「あなたってああいうイメージよね。小柄でまるくって、淡いピンクが灰色がかって」
シルヴァーグレーの髪がまんまるな童顔によく似合っている。
ふうん、大角さんは文句なしに風にゆれるホウキ草をみている。
大角さんはキレイな人なのだ、秋のホウキ草ように。

それから私たちは、巨大になったパンパスグラスを遠目にみながら、
椅子に腰かけてしばらく話をした。
そんな楽しい時がもてたのは、私たちが、何年もまえに、
百年の歴史をもつ都立園芸高校の、PTA仲間だったから。