2021年2月9日火曜日

「ブッダ」おぼえがき


手塚治虫作の「ブッダ」を読んでいる。1972年連載開始。
長編3000ページ。1983年の完結まであしかけ12年。

手塚さんが亡くなったのは1989年である。
32年もまえだった。
評論家呉 智英によれば、手塚治虫の「ブッダ」は、
釈迦という仏教の開祖の、「手塚なりの伝記」である。

かたほうで「チェルノブイリ」というアメリカ・TV映画の秀作をみながら、
3500年まえの歴史からを語りおこす漫画「ブッダ」の伝記を読む。
いま自分たちが、コロナの世界的大騒動のただ中に在ることを考えながら。

呉 智英は、1992年版の解説の最後に、こう書いている。
仏教の不幸は、三身(さんじん)の思想を持ちながら、
歴史的実在としての釈迦の伝記を持たなかったことではないだろうか。
キリスト教においては、不信心者さえ、否、不信心者がかえって
感動するようなイエス伝をいくつも生んできた。
手塚治虫の「ブッダ」は、仏教上の不幸を打破する先陣として
長く記憶されるだろう。二十世紀半ばに日本という国で
かくも巨大に発達したマンガというメディアに描かれたという意味においても。

*三身(さんじん)
 大乗仏教でいう、仏陀の三つの身、即ち、法身・応身‣報身のこと。
     法身(ほっしん〉 普遍的な心理そのもの。
     応身(おうじん) 歴史的に実在した釈迦。
     報身(ほうしん) 衆生を救う形を備えたものとしての仏。
 三身のうち「応身」は信仰の対象であると同時に、人間的興味の対象でもある。
 手塚治虫はこの「応身」に従って釈迦をえがいたのだと、呉は解説している。