2017年9月25日月曜日

故郷の村を


 こうしてわたしはふたたび、故郷の村を出たときのように、風がさししめす道をたどって
あたらしい生活に歩みだした。
                  ローズマリー・サトクリフ

 私の子どもで、こう言えるような人生を選択したのは、遥だった。
はるか彼方に行く人になるようにと思って、つけた名前だ。
 彼女は、モスクワでロシア語を習い、ペテルブルグに行ってロシア語にみがきをかけ、
オランダに渡り、ロッテルダムに住んで、そこがヨーロッパだからなのか、ベルギーに、
ドイツに、スペインに、フランスに、イタリアに、それからどこを歩いたのだろう。
 私はなんにも知らないけれど、京王電車にいっしょに乗ったりすると、彼女の立ち方が
オランダの人のようだと感じる。席はゆずるもの、という若い人の自然さ。