2018年1月28日日曜日

小人がいると


どうしてこうも、探しているものが見つからないのか。
名優北林谷栄さんは、八十才を超えたころ、しょっちゅう、
「家の中にいじわるな小人がいて」と、
チェーン・スモーキングの合い間にカンシャク玉を破裂させていた。
そいつがなんでもかんでも隠してしまうと言うのである。
女優さんらしいし、いささか西洋の童話みたい、
アンデルセンかグリムか、グリムっぽいなあ、などと思ったものだった。

それが今となると冗談じゃなくて、他人事じゃなくて。
北林さんの小人が毎日・・・。
最近の私は、探している物が絶対に見つからない。
階段を上がったり下がったりしながら、焦ってイライラし、
北林さんの家にいた小人の気配をなぜか感じて、
女優さんとはちがうから、声にだしたりはしないけれど、
「隠すの、やめなさいよっ」
隠し稼業に専念しているらしい小人を探して天井などをにらむ。
いらいら、はらはら、がっかり、もう煙草でも吸いたいなと沈思黙考。

煙草もねえ、買ってはあるけど ・・・そんなもの。
あんな北林さんのようなドスのきいた洒落た声はでないのですし。