2020年9月3日木曜日

歯磨きのチューブ


忙しい日。
なにか思い出そうとしても、記憶に残るできごとが、ひとつしかない。
冷蔵庫の扉をひらいて、緑茶がそこにあるはずと、上の棚に手をのばしたら、
掴んだのは、歯磨きのチューブで、シュミテクトとかいう・・・! 
なんでも薬用高濃度フッ素配合だった。
たしか2、3日前にさがして、ないと意識したおぼえがあるけど、
どうしてまた、私ってそれを冷蔵庫なんかにしまったのか!?

今までにも、冷蔵庫に自分のお茶碗をしまおうとしたことがあって、
うちの中に自分しかいなくても、どうかしてるアハハハと笑ったが、
それはもちろん、事前に気がつくから笑えるのである。

忙しい日だった。
とにかく。

私は料理が苦手でこまるけど、それでもスピードが出てきて、
外に食べに行こうよと息子に元気なく言いながら、5品目なんとか作った。
だから、けっこう頭は無事なのかも。
ご飯、イサキの塩焼き(大根おろし)、ナスの煮びたし、
味噌汁(豆腐、きのこ類、長ネギ)、漬物(キュウリ、ニンジン茗荷、生姜、
大根などを小さくきって漬けたもの)、砂肝とゴボウの炒め物も予備に。

これだと、たぶん塩分過多かも。
でもお医者さんは、あなたの食生活はそのままでいいですよ、となぜか言う。
自己申告で、問題はアルコールとお菓子ですと、私は話すけど、
それをできるだけ控えてと先生は言い、うーん出来ませんと私は言う。
「ま、いいでしょう、そんなに飲まなければ」
そんなに飲めないのよ、食べられないし。
もしかしたら、自然はうまくできているのかもしれない。
実習の話を息子から聞いては、晩ご飯の時どっと笑ったりしてるけど、
そんなに食べられない。とくにお米がダメだ。
   
片手で能力をのばし、一方で歯磨きを冷蔵庫にしまう。
ボケているかもの一方で、スピード5品目。
大丈夫、けっこういい線いってると考えることにした。

夜、DVDをふたつ。
「新聞記者ドキュメント」と「ホテル・ムンバイ」
日本の話とインドの話である。
新聞記者の話には、
このたびの総裁選第一候補(まちがいなくこの人が次期首相だろう)の
菅官房長官がたびたび記者会見に登場する。
冷たい顔つきの、あからさまな「言論の自由」への高慢・嫌悪・不公平。
彼の、差別意識まるだしの氷のような不機嫌に胸をうたれる・・・。
なんて恐ろしい人だろう。
この人にも家族はいるのだろうかと怖いようだった。

「ホテル・ムンバイ」はテロリズムの、これはドキュメンタリーではなく、
事実にもとづいて創作されたドラマ、事実の商業的再現、大ヒット作である。
こわくても目が離せないほど凄まじく、しかも華麗なエンタテイメント。
絶望的な映画なのに森達也監督による「新聞記者ドキュメント」よりは、
登場するどんな人にも、血の通う立場というものが用意されている。
虐殺を描いて、なおかつヒューマン、という映画。おもしろく見た。

虐殺の周辺にヒューマニズムがみえる、それは人間の願望にすぎないのかも。

それにつけても自民党は、これからどこに私たちを引き摺っていくのだろう? 
首相になるだろう人の実写から伝わってくる未来は 、
いよいよ言論の自由や、あたたかな理解力や、人間らしい愉快な柔軟性が、
どうしようもなく失われるだろうことを予感させるコワイものだった。