2011年7月19日火曜日

そういうくらし

「どういう映画が好きです?」
古今亭志ん朝さんがきいたら山田洋次監督が、こたえた。
「ホラ、僕らが子供のころあった、たいして後に残らないけど、どうにもこうにも
おかしくってつい笑っちゃったみたいな。そういう作品がとても少なくなった。」                            (河出書房新社「もう一席うかがいます」)

郷愁をそそる、どうにもこうにもおかしくってつい笑っちゃったみたいな、という言い回し。
こどもだったころ、そういう映画をみたし、なんだかそういう生活をしてたなと思う。
たいして後に残らない、忘れてしまった、でもそこが一番すきだったようなくらし。
ビンボウが前提だから、二度ともどりたくないけど、なんか笑っちゃってたのだ。
すごく笑っちゃって、おこられたりもしていた。

ヒトは、こどもでも、貧乏だと笑いたくて笑いたくてたまらなくなる。
娯楽になかなか手がとどかない環境にいると、なんとか手持ちの範囲でみんなが、
おとなもだけど、おかしいことをさがそうと、ついそういう傾向になる。
そしてふつうのくらしなのに、天才だな、みたいヒトがひねりだされて来るのだ。

幼稚園にいたときは、なにはともあれ、
そう、たいして後に残らなくてもいいから、
どうにもこうにもおかしくってつい笑っちゃったみたいな、
そんな時間がつくれたらなあ、と思っていた。
こどもと私、どっちが笑うのでも、それはかまわないのだけれど。