2011年7月18日月曜日

針葉落葉樹 

 メタセコイアは、歴史を中世代から中新世までさかのぼる堂々たる針葉落葉樹である。
 強くて勇敢で大らか、いつもその姿は新鮮だ。
 夏の大空に、濃緑のゆたかな尖端三角形をきっぱり風にさし出してたのもしい。
 炎天を意に介さずという、その風情がじつに私たちをホッとさせるのである。
 
 私は、メタセコイア通りの秋をいつだって待っている。
 秋になると、並木道全体が赤毛のアンの頭のよう、
 赤い燃えるような煉瓦色になって大騒ぎである。
 派手だ、火事みたいだ、とみんなが思う。
 それから季節がうごき、時間がたち、針の葉っぱはさびた茶色になって、
 どんどんどんどん、下に落ちてしまう。しかたがない。冬がくるのだ。 
 
 派手、がおわると私はすごくがっかり、でも、冬もきれいだったっけ、と気をとりなおす。
 メタセコイアが潔く落葉するからだ。
 何億ものさび色の針葉が、はらはらとみっしりと大樹の根元に落ち、
 無数の枝が今では凍る骨のよう、沈黙にみちみちたレース模様で冬空を飾っている。
 
 冬が終われば春がやってくる。
 お祭りの春だ。
 メタセコイアの赤ちゃん針葉がやってくる!何億もの若葉が!