2011年12月21日水曜日

ア・ページ・オブ・パンク 12/17


真っ暗になった。
「ほら、ヨコ」
シェルターは満員。総立ちである。
入り口ちかくの階段でつつかれてヨコを見たら、
なんとすぐそこの壁に黒いクモ男みたいなものが張り付いているのだ。
「ア・ページ・オブ・パンクのボーカル」
ステージではもう派手な演奏が始まっている。
ここからマイクの前までどうやって行くのか満員なのに。
蜘蛛男は壁にかたまったままガンコにポーズをくずさない。
私があいた口がふさがらないでいると、
目のまわりマッ黒の白い幽霊じみた細身白ひげのサンタクロースが、
パッと振り向き、こっちによってきて階段の手摺をくぐり抜ける。
天井の鉄パイプにぶら下がり、空中を、おどろく喚声にあおられて、
マイク前へ、ステージへとすすんでいく。

たいした気晴らしではないか。思い出すとみょうにおかしくって。

フジロッキュウ、北海道のバンド、ア・ページ・オブ・パンク、GOROGORO、
そしてThe SENSATIONS。
12月17日のシェルターは、The SENSATIONSの主催ライブであり、
彼らのファンで会場がいっぱいだと聞いた。
その通りの光景だった。
混雑密集、立錐の余地もない。スゴイ人気。

「ロックンロールの基本理念は、イヤなことはイヤ ということだ。
思ってることが形を変えずに表現できる。
3分間に言いたいことを詰め込める。複雑なことは言わない。
たまらなく良いわけではないが、他のものよりはいい。
文章は与えられた環境がよければ有効性をもつけど。
だけどロックはパワーがあるから。
わあっと盛り上がれる、共通の基盤で。今の社会で、
目にみえる形でそうやっているのはロックンロールだけではないか。」
質問した私に長男が説明したことだ。まだ二〇世紀というとおかしいが、
初期のア・ページ・オブ・パンクをはじめるよりもっと前、
なんだか鋲だらけのカッコウをし、長靴、頭髪モヒカン風だったころ。
何年たとうが生活がどう変化しようが、この考えは彼の一部なのだろう。

この日のア・ページ・オブ・パンクの、とにかくの陽気。
場内の、いえばコンクリートみたいにかたまった数々の無表情、
まとまらないというかたちに沈殿した熱気。
The SENSATIONSにしか期待しないのだろう圧倒的満員の相手を、
ア・ページはゆさぶり、自分らの空気で、攪拌した。
まがりなりにも「イヤなことはイヤ」を共通基盤にするべく言語化、
ひるんだ場内は一度ばらけて解体するが、それを再度たてなおした。
パンク。参加者との強引な駆け引き。
そんなことができるなんて、どんなにかみんな楽しいだろうね。
終始おかしがらせて正体をくらまし、さっさと切上げてしまう奏法なり。

ついつい笑っってしまった。