2013年3月27日水曜日

統合失調症を生きる、というフォーラム


懐かしい友人に誘われて「統合失調症を生きる」というフォーラムに出かけた。
フォーラムとは公開討論会のこと、NHKエンタープライズの主催である。
エンタープライズって? この際しらべたら事業とか企画である。
はるばる横浜駅まで渋谷を通っていく。
3月17日のことだけど、東横線が新装なってなんと地下五階の駅に。
横浜駅だってもう空恐ろしいぐらい新しく変って、わけがわからずウロウロした。

でもとてもいい集まりだった。
この日の参加者そごう横浜店9階に1,000人。
私がいっしょに行こうと誘ってもらったのは、この病いがけっこう身近かだから。
彼女も私も身近かに統合失調症をかかえる人がいるのである。
病気を治すには。
病気にならないようにするには。
病気でもしあわせにくらそうとすれば。
そういう問いを私も案外自然に持っているわけである。
それにしても1000人の人、人・・・会場はもういっぱい。

たぶん医学的詳細やフォーラムの進行についてはNHKがなんとかしてくれるのだろう。
私はただもう自分の感じたままを話してみたい。
町永俊雄モトNHKのキャスターがコーディネーターだと案内に書いてあったけど、
この人の司会進行はすばらしい。
用意周到、当意即妙、なによりの理解力と感受性。
しかも気持ちのやさしさが、舞台上の討論を聞きやすくわかりやすいものにするのである。

横浜の精神病院の先生がふたり。学歴経歴ばりばりピカピカ。
ハーバード大や琉球大までをふくむ学歴資格肩書き眼が眩むほどの専門家と
経歴肩書きばりばりではあるが、IPS 、ACTにとりくむという専門家と。
ふたりとも医学博士である。
ちなみにIPSは個別就労支援、ACTは包括的地域生活支援プログラム。
壇上には司会の町永さんとこのふたりの精神病の専門家、
それから当事者がふたり、男女である。
かれらが1000人をまえにパネルディスカッションを行うのだ。

当事者とは統合失調症を病む人であるが、
この日の出演者のなかで、このふたりよりニンゲンらしい表現をした人はいなかったし、
統合失調症というわかりにくい病気を、このふたりほどわかるように語った人はいなかった。
2011年に見たイタリア映画「人生ここにあり」は涙なしには見られない映画だったけれど、
精神病院を国策として廃止したイタリアの哲学が納得できるような、
ほのぼのとした愉快な作品だったと思う。
それを思い出した。
今日ここでふたりの当事者に、
こんなふうに自由に語らせたプロセスのすばらしさを思う。

男女ふたりのうち、
女性は自由奔放に見え、
男性は私の息子そっくりに見えた。
私の息子は精神病院にいったことはない。
私はいままで一度も息子が統合失調症ではないかと思ったことはない。
でも彼は私の息子にうりふたつだった。
もの哀しげな大きな瞳・・・。
質問にこたえる前の沈黙の重さ。
それこそ外国の映画にでてくる羊飼いみたいな衣類の風情。
私だけではないと思う、
1000人の聴衆は、魅せられたようにこのふたりの当事者を眺めていた。
たぶん、私たちはみんなこのふたり、この正直で純粋なふたりに、人知れず似ているのだ。
どこかしら似ているのだ。
そして困惑の極みにいるのだ。