2015年1月15日木曜日

介護報酬の引き下げ


なんで選挙に行かなかったり、安倍内閣支持に一票を投じたりしたのか。
そんなことがよくできるとあきれてしまう。

連日のニュースは、軍事費の3年 連続増加を伝えている。
防衛予算、前年度比2・0%増しで、4兆9千8百1億円。
一方では、介護報酬の引き下げである。過去最大の下げ幅だとか。
選挙が終わるや、ケロリと国家が、
介護保険事業者に支払う価格をもっと安くと画策する。
これには心底、憤慨した。

新聞の社説によれば、制度開始時より、介護報酬すなわち賃金は2・1%下がっている。
常勤のホームヘルパー、施設職員の平均月収は全産業平均よりも約10万円低い。


火曜日、朗読の練習に木下さんのお宅にうかがうと、
いつもは入れ違いに帰るケア・サービスの人が出てきて、
「今日は、木下さん、ダメですよ」と言った。
車椅子から前倒しに落ちて転んだのだという。
救急車で病院に運ばれて、額を縫ってもらい、帰宅したところだという。
「入って来て」と呼んでくださったから木下さんのお部屋に行くと、
きれいな白髪に血のあとが残り、顔は紫いろに腫れあがって、本当にかわいそう。

でも私が言いたいのは、そのことじゃない。
倒れたとき、自由になるのは左手だけなのに、木下家にはだれもいなかった。
木下さんの闘病生活には、やむを得ない空白の時間がけっこうある。だから、
サービスの人が到着するまで、床に転がったまま、1時間半も木下さんは待った。
血液をサラサラにするクスリを何種類か飲んでいるので、血が止まらない。
おまけに床暖房で温かいから、血液はじゃんじゃん流れた。・・・血の海になった。

でも私が言いたいのはそのことじゃない。
やっと助け手が定時にきた時、床も木下さんも血まみれで介護支援の人は驚倒した。
彼女はこういう事故にまだ馴れていない人だった。
「どうしたんですか? どうしたんですか、木下さん!? どうしたんですか!」
お手上げ状態で、震えちゃってなんにもできないのである。

仕方がないから、倒れたまま木下さんがまわらない舌で指図をした。
恐怖で動転し、ただ騒ぎ立てるだけの介護士に、
ベネッセ(介護保険事業者にあたる)の事務所に電話を掛けるよう指示し、
よく知っているシッカリした人を、誰々さんを呼んでほしいと転がったまま頼んだのである。
でも、私の言いたいのはそのことじゃない。

今だって、彼女彼らは資格を懸命になって取得し、 資格内容に見合わぬ低賃金で働き、
今回のような見たとこ恐ろしい非常事態の責任まで負わされている、
そのことが理不尽に思えて思えてしかたがない。
たださえ介護士の労働条件はひどい。人数だって足りない。
病院の担うべき仕事を介護士に肩代わりさせる無情無責任もあんまりだと思うが、
現状をその上さらにひどくしようというこんな内閣に、いったい誰が投票したのか。
どういう理屈があって、税金を攻撃的武器につかってしまうのか。
介護報酬を働く人から奪うのか。

日曜日だし、家族の団らんを優先させて投票は諦めました、という人のなんと多いこと。

あなただっていつかは病気になり、いつかは死ぬ、
想像力を働かせなくたって明日は我が身と思うのがふつうではないか。