2015年1月2日金曜日

2015年1月1日


あけましておめでとうございます。

マリーン・ルージュという船に乗るためホテル・ニューグランドでコーヒーを飲んで
待機中、山下公園わきのチケット売場の発券時間が3時半からなのです。
時間つぶしもこういう場所だとゴージャズなもの、真正面に発券所も船も見えるし。
雪がちらちら降っていて、下の歩道を2,3の人が影のように歩いて行く・・・。

2015年1月1日。
ニューグランドほど由緒あるホテルともなると、新年のお客さんは富裕層ばかり。
ななめ向かいのテーブルの、椅子の背に掛けられたコートのミンクみたいな毛皮、
長い髪をブラウンに染めた赤いスカートの彼女が立ち上がりながら外套をはおると、
それはさりげない皮のコートで、光沢のある実に美しい毛皮は裏側だったのでした。
そんなデザインってあるわけかと私はびっくり。
手前のテーブルに腰かけた老紳士はゆったりとした羊毛の軽そうなカーディガンを着て、
メガネのフレームは琥珀なのか水牛の角なのか、灰色めいた黄土色がきれいです。
同じ色(アイヴォリー)のセーターの紳士は、別のテーブルにも。
いま家族連れで席に着いた子どもだって、全身これ発表会の日のバレリーナみたいな 。
それでこっちの少女は小さいのに英国調の一分の隙もない端正な一揃い。
あっちのテーブルの5人家族はお父さんが高名な音楽家らしく、
お母さんと子どもが身振り手振りで、たのしそうに音階のあれこれについて話しています。
それで、みんなにこにこしている。
お父さんは黒いビロウドがいかにもの上着。お母さんはラフな横縞のセーター。
子どもは3人いるけど、どの子も普段着なのにどこかきちんとして、清潔そうなのです。

そこに獅子舞の連がやってきて、コーヒーを飲んでいる人たちの間を練り歩くのですよ。
先導は女の鉦叩き。恵比寿さん(だと思う)もつれて。福の神ですよね。
せっかくのお正月だしご祝儀という習慣が消えたのもなんだか。
そうだ、縁起ものなんだしご祝儀を渡そう。
鉦叩きの合図で向こうへ行きかけたお獅子が 私達のテーブルにもどって、
畳んだお札を大きな木の歯にくわえるや、なんとガクガク,、ガクと呑み込んでしまいました。
どういう仕掛けになっているのか、わっと賑やかになってお正月らしい雰囲気。

富というものは伝統的家族関係を伴う。伝統がものをいう。どうもそのようです。

そういう伝統の埒外に生まれたし、自由気ままにくらしたから、
結果、私は今こうなのかと少々不安になってきて、それから少しおかしくもなって。
だってね、私のアノラックは1500円。ブックオフのそれもバーゲンで 買ったのです。
薄いカーディガンは「ガゼルのダンス」ガレージセール展示の500円。
重ね着の葡萄色のカーディガンこそ高価でしょうけど、これは幼稚園に就職した時、
心配してくれたみっちゃんからのプレゼント。
私が1年の最初に着たかった正真正銘の組み合わせはこれ。
大草原の小さな家なみに洗濯だけはしっかりやってあるのですが、
値段だけで考えると、同じ場所にこんなふうに腰かけているなんてまるで小説みたいだ。

まーこんなところでなにを考えているのだか、寒風にたえられず紛れ込んだホテルで、
コーヒーを飲んでいるだけなんですけれど。

カミサマ、今年、この物凄い格差がこれ以上広がりませんように。