2012年2月27日月曜日

文字ばけのような一日  (壱)


その前の晩、ファクシミリで、
試験をうけてごらん、という募集要項が送られてきた。
応募の締め切りが明日、本人がその事業所まで書類一式を届けなきゃいけない。
何時に行くの? 午後五時だそうで、遅れるなって。
八百字以内で小論文を書き、履歴書には写真を貼り、履歴はもちろん書くのだ。
返信用封筒には宛先とそれから八十円切手が要る。
できっこないでしょ。
だってあしたは、午前中、歯の治療なのだ。
午後一時にみっちゃんと上北沢で会う約束もしている。
「今晩、論文チャチャッと書けませんか?」とすすめてもらったけど、
朗読の会がおわって、あれもケッコウくたびれる、私もうダメという感じ。
「今日はもう寝る」とか言って、デンキを消して、寝てしまった。

つぎの日の朝早く、五時ごろ目がさめ、なんとなくやる気に。
どっかにあるはずの原稿用紙をがさがさとさがす。
パソコンはダメ、うちの印刷機がイカレているので、手書きするしかない。
書いたら、なんとか書いたら原稿用紙二枚だから、なんとか書けてしまった。
合格はしないかもしれないが、参加することに意義がある的な気になってきた。
履歴書なんか無い、買わなくちゃならない、書くのがめんどくさい、出来ないかも。
と思いながら、切手はあったから封筒に宛名と住所。写真もないにきまっているけど、
古いのがあるから古い免許証用の写真を用意。だめでも知るもんか、みたいな。
ハサミ。修正液、筆記用具。茶封筒あれこれ。糊(のり)がない、ない、ない。
朝食の用意をし、片付けもおわり、
あれこれ、手さげにいれながら、仕事に出かける息子に
「どう思う?」
ときいてみた。そんな仕事やめたほうがいい、でも応募はやるだけやれば、だって。
返事になってないから決心もつかないが、こうなると不思議に中止はできない。
マラソンずきって、こんな感じなのかなー。

私は歯医者に出かける。
クルマで一時間以上かかる。
予約を断ればいいけど、当日の朝だから、わるくってそんな事はできない。
みっちゃんとも約束したんだし、せっかくだから会いたい。
第一もうこうなると、断る時間が惜しいというか。
空を見ると雲がある。なんだかわかんないような雲だ。
自動車道は渋滞とはいかないが混んでる。
ざわざわと気持ちが動く。
気色がわるい。