2012年7月30日月曜日

温泉へ


空気のせいか気圧のせいか、どうにもこうにもならなくて、
朦朧として、こんな暑い日にまさかと思ったけれど、温泉場へ出かけた。
まさかと思うのに、温泉も、混雑している。
広間の畳の上にどたんとのびちゃって、しばらくぼーっとし、ビールをひとまず一杯飲んだ。
身体がこわばって、目がかすんで、食欲はなく、あーあお風呂か、と思う。
温泉にきたというのに。

あたりは人でいっぱい。子どもも赤ちゃんもいた。
むこうのテーブルに湯上りの、分厚い金髪の中年男性がふたり。
ひとりは内気でおじけづいたような人であり、ひとりは腕にタトゥーの親切そうな人である。
職場のなかよし・・・、しきりに話しをして。
おかしいなぁと、がっくりしたまま考える・・・。
昔はおじけづいたり親切だったりする中年男は金髪にならなかったんじゃないの。
まあ、でも、世の中、こういうふうになっちゃったんだなあ。

感慨にふけってきのうの電車のなかを思い出す。
浴衣全盛。どこかがやる各所花火大会のせいか。
金髪茶髪の長い髪の毛で、浴衣がえんじ色で、桃色の帯にさらにリボンをつける。
まるい目にドッテリ金色と青のアイシャドウを塗って、唇にはぬらりと光るみょうな口紅。
そんな女の子がじっとり若い男に浴衣姿で抱きついて立っているのだ。
こういう流行をつくる人って、だれなんだろう?

おとといはよかったな、とまた電車の中。
車内はめずらしいことにちょうどいい冷房。すずしい。
シートに腰掛けた男の子がヒザに大きな本を開きシッカと本を読んでいる。
本を読んでいるおとなが、ほかにもいて、ケイタイを読んで?いる人もいたし、
目をつむっている人もいた。
電車の中は静かで小津安二郎みたいな世界。
立っている人は数えるほどしかいなくって、不思議とちゃぶ台なんかを私は連想。
みんなが落ち着いていい顔つきだった。

横になって、本を読む。温泉に入らなきゃとも思う。
堀田善衛の「若き詩人たちの肖像」を読む。
耳もとを何人もの人が歩くけど平気。こちとらあ、いやだと思う気力もないわけで。
堀田さんがものすごい作家だということはよく判っているけど、
スゴイ人って若いとこんなに感じがわるいもんか、と怒りながらよんでいる本だ。
こうだからこうだ、と
ただその通り正直に書けばこうなる、という感じがまた凄くって、
頭がくたびれて眠たくなり、しばらく寝てしまって、
ーやっと温泉。