2012年7月12日木曜日

パーティーをひらいて



小沢昭一がめぐる「寄席の世界」という本のあとがきは、小沢さんの俳句一首のみ。
帰り花夕風わたる帰り道    変哲        
ー朝日新聞社ー

パーティをひらいて終わったあとの私の気持ちって、この句のようだった。
しみじみ、みんなのよい話がきけて、たのしいゆたかな時があって、
そこにはじぶんの人生をかけたそれとない精進もあるわけで、
だからぜんぶが終わっての感想は、贅沢なような質素なような、
気持ちのよい夕風にあたってこれで帰る、という気分だったのである。

「寄席の世界」は対談の本で、小沢さんと矢野誠一さんがこう語りあっている。
矢野
あれはなんなんでしょうね、噺家のほうにも成長過程というものがあるし、それを聞いて
いる客のほうにも成長過程というのがあるわけでしょう。その両方がうまく一緒になって
いくというのが理想なんじゃないかな。
小沢
つまり両方とも、文化的に年を重ねていくということですかね。それがピタッと合ったとき
の喜びというのはなんともいえない。


図々しい言い方かもわからないけど、このあいだはそういうふうな集まりで。
はじめて家に来てくれた人もいたし、以前、彼らの家に行って音楽をきかせてもらった
「一軒家のライブ」の人にも、やっと会えた。
若い母親たちと、彼女たちよりまだ若いアーティストたち。
いろいろな仕事、いろいろな年齢。そして生涯新劇人の今野鶏三さんの朗読。
それでみんなが疎外感なしに自由に話をした。
これが私の人生の目的だったといえば、おかしなかんじだろうけれど、
若い時から、その機会をつくろうと考えて努力したのは本当だ。
だって、なんだかむずかしいことですもんね!
議論したり話したりってね?

私たちには、じぶんより若い人間と話す場所も能力もない。
老人はもちろん、どんな若い人でもそうだ。
私たちは輪切り状態で育てられたから、ほかの世代から学ぶことができない。
そして、だからこそ日本に言論は育たず、独裁者の恫喝にすぐ負けるのである。

参加してくださったみなさん、ありがとう。