2012年9月25日火曜日

ザ・バトル・オブ・パンク  9/22


ふたつのバンドがバトル。
ゴロゴロとア・ページ・オブ・パンクが。
リーダー同士の日ごろの言い争いを「演奏バトル」形式に昇華させた試みで、
企画としてはけっこう抜群。主催ア・ページ。いかにもらしい。
何日か前、ゴロゴロのリーダーに行き会ったとき、ツトムを指さし、
「やっつけろ、こんなやつ、こてんぱんにやってしまえ!」
と言ってみたらば、
「そうですよねえ? そうしますっ!!」 
などとユウくんは言い、ツトムくんはニヤニヤした。

高田馬場の音楽館というスタジオ。
ゴロゴロとア・ページ双方の味方がゾロゾロ集まって、その数もカウントされるのだ。
入場者にウマイ棒が配られてお祭り騒ぎ。後方ヨコにバトルの進行表が貼ってある。
拍手の数で勝敗を決めるという。
いっぱいの会場のうしろ壁ぎわで、がたがたする椅子の上に立って見物。
それはもう楽しくておもしろくてエキサイティングな2時間だった。
結果、引き分けというのが会場および司会の判定。
ジャンケンでア・ページが勝った。パンクだからパーを出したとか(!)。
人生というか人間模様というか、
あんなにいろいろが見えたことはない。
小説のようだった。

成功
トライアングル全開。
長期にわたる複雑多様な人間関係の足し算。
こんなふうだといいなあという若いイメージの洗練された実現。
ア・ページ・オブ・パンクとゴロゴロは異質で、双方案外に危なく大人。
喧嘩の組み合わせとしてはすごくいい。
しかも気がつくと、ふたつのバンドの友達が、
バトルに乗る気、すっかりやる気、おもしろがって遊ぶ気だ。
会場はフラット、線引きのあっちとこっちで、床がミシミシ鳴っていた。
スタジオの機材が壊れるんじゃないかというような華やかな大騒動、
勝ち負けに徹底してこだわり、競奏およびリーダー同士のけなし合いで盛り上がり、
そこに各種友人たちの、悪口冗談タメ口とフッ飛んでくる人体が加わる、
興奮と期待と一体感とがわんわん高まって見ているだけでも熱気で汗まみれ。
勝敗を決める拍手も、おまえらどっちに拍手したか見てるぞ仕返しするからな、
などと脅してドッと笑わせるのである。司会もよかった。

失敗
そこで。さあこれからという時に失速が起こり、驚くべきことになる。
1分間づつ3回交互に演奏、気合が入ったところで、
次はいよいよ各10分づつの激闘のクライマックス。
さっきの勝負に僅差で勝ったゴロゴロが先行演奏なのであるが、
これがまたも会場を圧倒するほどエキサイティングな素晴らしい出来。
当然ア・ページは死力を尽くして闘うであろう、サア実力はどっちが上だろう!?
会場の期待と興奮が、絵に描いたみたいに沸騰点に達し、
見たとこア・ページが全力疾走に移ろうと楽器を高々かまえた瞬間、
中央に走り出たぺイぺイちゃんが次の10分間を占領、
ゴロゴロとぺイぺイちゃんが対決するという図式に「バトル」はなった・・・。
ハッキリ言ってこれはないだろう。
しかしそうだからってどうしたらいいのか誰にもわからないのだ。
みんな呆然。必殺効果バツグン。電撃ショック。
悲劇で喜劇。小説。
ま、パンク。

考えてみればパンク・ロックの対決に、
土台パンクとはちがう質のぺイぺイちゃんの加勢をたのむって、
たのんだア・ページの作戦がおかしい。
ゴロゴロの演奏中、「パンクじゃないだろう」とかゴロゴロに難クセつけてなかった?
だったら自分たちも純粋パンクで闘いなさいよ。

残念
ア・ページ・オブ・パンクのチアキは登場の瞬間から相変わらずのドラマティックさ、
戸を破りの天井ぶらさがりの人の頭を伝いの目がさめるような出場、ゴロゴロ演奏中も
ユウくんのヴォーカルを侮る模写パントマイムがおしゃれで秀逸、
本日はア・ページがゴロゴロを制覇するだろうと予感させた。
一方のゴロゴロがまた、彼らの音楽性や舞台センスがバトルで挑発されたかして、
極限までの爆発的展開、元来スマートなふうのユウくんの人柄に加うるに、
反射反発力の強靭さを見せつけて、けっきょくは彼らが勝ったかもしれなかった。

もったいなかったんだよねー。

発見
注目すべきはその興奮の失速をたてなおそうとした気分とやり方だ。
ア・ページがぺイぺイちゃんの10分間を「ア・ページ」と認知、演奏はゴロゴロへ。
決定したとたん司会に演奏をかぶせ、たちまちライブは次の5分間バトルへと移行。
迷走をたてなおす方策が鮮やかに見えた一瞬だった。
ゴロゴロのカッコいいセンス力量である。
それに友達、バンド仲間って、おもしろいもので。まー、浪花節の世界といいますか、
むかしの木場とかやっちゃ場、男の世界ってこういう感じだったか。
若いのに親切。いわくいいがたい共感があるらしく、終わったあとの雰囲気もまたシブい。
勝敗を決める最後の拍手だって、互角、だもんねー。
ツトムくんは幸せな人である。

パンク・ロックは小説とはまったくちがうジャンルの芸術だ。
スカッとたためばいい。
あの日はあの日、今日は今日だ。
そしてどうするか。
演劇の世界ではアントン・パヴロヴィッチ・チェーホフの台詞が有名である。
「一度目は悲劇、二度目は喜劇」
どんな憂愁にみちた悲恋もこういう運命をたどるという警告だよ。
ライブもそうよ。気をつけてね。