2020年11月17日火曜日

すぎゆく秋の1日


洗濯物を乾かすことで日が暮れた。

家の北側には昨日も今日もおとといも、
クリーム色のペンキ?を壁面に刷毛で塗る人がやぐらの上にいる。
作業着がくたくたにくたびれて、泥とペンキだらけ。
どの人もあたまに巻いた手拭が汚れて、マスクなんか顎の下だ、
規則通りやっていたら働けない、息だってつけないだろう。

シンナーがものすごく匂うから、窓もドアもきびしく封印されている。

こんな作業を何人もの人がやっていて、よく見れば苦しい顔である。
なんて過酷な仕事だろうか。こんな毒々しい作業をして、
休憩や健康被害防止手当は保証されているのだろうか。
こんな労働を長時間やって当然みたいな。
いや、まさかそんなことでも無いのだろうか。

私が小さかったかったころ、両親が建てた家はすごく小さな木の家だった。
職人さんがペンキを床に塗っていたけど、気にならなかった。
いい匂いだという気がしてそばにいたりした。ニスのにおいがお気に入りだった。
住宅金融公庫で借金をして建てたという家。
ながいあいだかかって、借金がなくなるまで大変だったときいたけど。

今日、庭のある南側は、塗装が終わったからか、人影がない。
ガラスに張り巡らしたポリエチレンの覆いもなくなっている。
私は、外に出るなという張り紙のついたガラス戸を、開けっ放した。
撤去されて網戸なしの生活なのに、
シンナーのにおいが建物をどっと取り巻いているので、
鳥もこないし蚊もこない。けっこう・・・いいのかなあ。
昆虫だって野良猫だって、おそれをなして寄り付かないのだ。
ニンゲンの場合は、まあいいのかしら。

暗くなるまでガラス戸をあけっぱなしにして、
Tシャツだの上っ張りだのをハンガーにかけて干した。
とっかえひっかえ・・・、もうほかのことはなんにもできなかった。
鉄筋コンクリートに住んでいる人は、乾燥機つきの洗濯機を買うらしい、
でもたとえ中古でも、いま車と乾燥機なら、うちはクルマ。

私って苦笑いしたことがないな、と急に気がついた。
ど単純。怒るか笑うかそれとも悲しむか。微笑というのもしないんじゃないの? 
いやまさか。微笑ぐらいしてるわよ。
とかそう思ったりしてよくよく見ると、
作業する人達は、土曜日に私が買った「中古のスズキ」みたいな車に乗っている。
どうやら中古のスズキで、ここのところ、うちの団地の敷地は混雑だ。