2021年3月14日日曜日

小鳥、集金、もと首相


土曜日。雨の音を聴きながら、一日中ひとりだった。
桃の花をながめて、白湯を飲んで、それから・・・また白湯を飲む。
雨の音をきくばかりの一日。
柿の木のまわりで、小鳥が「いじめこふ」に追い払われている。
「いじめこふ」は、うちを縄張りにしている野鳥で、
私がまいたパンくずを、自分じゃたべきれないくせに、
見張って見張って、ほかの小鳥がくるのを許さない。
大雨なのにどっかの枝に隠れて見張っている、こまったもんである。

夕方、くらくなったころ東京新聞の集金の青年がきて。
こんな大雨なのに、寒いなかを本当にごめんなさいと謝ると、
・・・・・・寒いことは寒いんですけど、と言う。
「さっき空に虹が掛かっていて、それを見たから幸せでした」
寒さで固くこわばった若い顔が、一瞬だけ、短くニコリとした。
ああ、なんだかね、
すこし幸せをわけてもらったようでしたよね。

12日の夕刊の連載。
管直人氏(もと首相)について書かれていて、
昨日のTV番組をこの人も観たのだな、とうれしかった・感激した。

河合弘之連載「この道」より
    福島第一原発は全電源が喪失し、原子炉で核燃料が溶け落ちる
    メルトダウンが起きているようです。1号機に続き、十四日に
    3号機、十五日に定期検査中の4号機も水素爆発し、地上から
    冷却水を注ぐ作戦が行われていきます。
    (中略)
    当時民主党政権で菅直人首相です。管さんは震災翌日の十二日
    早朝に自衛ヘリで第一原発に赴きました。
    内閣府原子力安全委員会の班目春樹委員長や経済産業省の役人も
    当てになりそうになく、「誰がほんとうの事を言ってくれている
    のかわからない」と、自分で現場を確かめようとしたのです。
    被災地を空から眺め、吉田昌郎所長と会って、彼ならこの現場を
    任せられると思ったことは、その後の指揮に良かったはずです。
    (中略)
    自身のメルマガで、管さんの悪口を言った安倍晋三前首相だったら
    対応できたのかな。

余談であるが、このTV番組の司会者はなんという人か。
思いあがった傲慢不遜ぶりに、ふだんTVを見ないからなのか、
あっけにとられてしまった。
これって、この頃の流行なのかしら。
それともこの非礼は菅さんの実力を引き出すための「ワザと」なんだろうか?

手に汗をにぎったけれど、結局のところ、
どんなあてこすりや、傲慢無礼な断定や、威嚇にも、
管さんはビクともしないのである。
それはほんとに、ホッとするような嬉しい眺めだった!
司会者がどんなにバカにしても、肯定も反論も説明も菅さんは正攻法。
時間がたてばたつほど、政治家としての管直人元首相の力量が、
TVを見ている私達に伝わってくる。
こんなリアルなドキュメントなら、テレビだって勉強になる。
「格がちがう」とはこういうことだったのかと考えさせられる。
実に嬉しい眺めだった! 
どうしてかって良き人間について考えることは、私たちの楽しみだからだ。

ヒトを格付けするなんて間違ってると、なんとなく思ってきたけれど、
管直人に投票したことも私は無かったんだけれど、
とにかくあの日、久しぶりの元首相は、政治家とはかくあるべきという姿を
社会科の教科書並みにきちんと見せて、痛快だった。

十年前にこれがわかっていたらなあ、と思う。
そうできなかったのが残念でならない。
オランダにくらす遥にそう言ったら。だってさあ、と娘が言った。
「仕方がないよ、お母さん。管直人が総理大臣になった時、
自民党寄りなんだって感じだったしさあ。」