2021年3月1日月曜日

「私は真実を知りたい」・2

 
「私は真実を知りたい」を読んで、いちばん胸にのこったのは、
自殺した赤木さんの奥さんのお人柄だった・・・。
そして、このいかにものお人柄によりそって告発の日を迎えた
職業的記者としての相澤冬樹氏の仕事ぶりのことだった。

ふつうの日本人、という身分を私たちはどう表現すればよいのかしら。
市井の、だろうか?
市井(しせい)の人、とはごくふつうの庶民をあらわす言葉だ。
赤木雅子さんは、自分が本をだすなんて夢にも考えたことがないだろう。
趣味はトッちゃん(夫)という、平和で幸福な市井の、妻君だったのだ。

この本の書き手はふたり。
かつて幸せだった赤木雅子さんという、夫に死なれた奥さんと、
華々しくも戦闘的な、
週刊誌のスクープいのちみたいな記者、相澤冬樹氏と。

権力をほしいままに行使する巨惡、総理大臣の犯罪と公務員の腐敗と裏切りを、
一介の国民と職業的書き手が、協力して国家を告発した共著なのである。
赤木雅子さんという日本人の自然を、そこなうことなく表出するために、
その日がやってくるまで、相澤さんは膨大な時間を待った。そして、
承諾を得た日からまた、徹底して長い時間をかけて文字化したのだった。

「私は真実を知りたい」のたぐいまれな長所は、
水と油みたいに溶け合うはずもない二人のおとなが、いっしょになって、
巨惡を追求するに至る、そのプロセスがていねいに記録されたことである。
これは職業人としての相澤記者のお人柄および能力によるところだろうけれど、

それはそうなのだけれど、
私は、赤木雅子さんという、いかにも市井にありそうな女性像に、
もうなんというか、とても惹かれた。
読みやすい、わかりやすい本である。読んでほしい。
雅子さんを知ってほしい。
この二人の努力を忘れないで、と思わずにはいられない。