2014年1月17日金曜日

ギター修繕の決着


ギターの表面が、買って半年もたたないのに剥がれたのである。
かの有名な、Martin、アコースティックギターである。

修繕を必要とするギターおよび保証書をもって彼は秋葉原リボレへ。
一週間がすぎて、リボレから電話がかかった。
8300円支払え、修理に3ヶ月かかる。そういうことだった。
電話を家で受けた私が「保証期間中なのに?」とたずねると、
店員がクロサワ楽器にすぐ問い合わせてくれた。ヘンな話だからである。
持ち主がぶつけた結果の修繕であり保証はできない、が即刻もどってきた返事。
リボレの店員の詫び文句はこうである。
「そうなると、こちらではどうすることもできないんで」
8300円のうち3000円がリボレこのたびの手数料。伝達のみで300円じゃなく3000円。
「そういう決まりなんで、すみません」とあやまっている。

腹が立ってだれかれに意見をきくと、たいていの人が、
いい加減な品物を買ってしまったのだろう、諦めるほかはない、と言うらしい。
いくら争っても、相手にされないよと断言したりするらしい。
ぶつけた覚えもないしキズもつけてないと本人が言うが、それはてんで問題にならない。
これには胸をうたれた。なんだか灰色。絶望の種はいつも始めは小さいのだ。
・・・作って売った「会社」ではなく、買った者の「不運」に責任をとらせるという、
無力な者が一生涯ひき受けてしまいそうな、哀れな運命の連鎖。
スゴイ話だと思うけど、当然そうなるさと思う人のほうが多いらしいから驚く。

きのう、また電話がかかった。クロサワ楽器の人からだった。
わるいけど自分の勤務時間内に電話しても、ギターの持ち主だって働いている。
5時まえに電話を掛けて、若い者が家にいるわけがない。
電話の相手は8時にかけなおして直接本人と話しあいます、と私に確約した。

クロサワ楽器店はマーティン・ギターの日本代理店である。

あなたがたは秋葉原でギターを買う人間を「貧乏人」だと思っているのでしょう。
お金持ちは、銀座の山野なんかに行って、だいじな楽器をらくらくと正価で買う。
たとえば8300円の修理代にショックを受けるようなくらしの中にいるニンゲンが、
・・・何万円もするMartinを葛藤のすえ、やっと買ったとして、
軽はずみにぶつけたり、上から圧迫したり(そうしたというのだ)、
そんなことはまず絶対にしないでしょう?
それでも半年もたたずボディは剥がれた、これが当方だけの問題なのかどうか。
私が許せないのは、買い手の不運に対する一片の同情もないやり口だ。
今回の修理費問答無用請求という態度には、弱者に対する軽蔑が見える。
なんて傲慢で無礼で不道徳なんだろうと思う。
だって、あなたがたは「お客様」にそれなりの対応や説明をするでしょう?
もしもこの話が、秋葉原からではなく、銀座の山野あたりからきたならば?

私がどうしても言いたいことの根本はそれである。
会社の言い分ばかりが横行する多くの不可思議なシステム、
若かったり貧しかったり気が弱かったりすると、かのMartinを買ったというのに、
その努力や儚いユメに一片の敬意も払われない。保証書なんか無いのとおなじだ。
最高の職人仕事ってそれか。
そんな気風に支えられた木製楽器ってどういう音をだすのか。
非芸術的楽器会社の、品性の欠如がイヤだ。

保証書は権利を獲得。修理期間に要する3ヶ月は1ヶ月に短縮。
話しあいはギターをつかう当人が納得するかたちで終わった。

なぜ、そういう常識的な結末になったか。
たとえ相手にされなくても、異議申し立てはあきらめずにしてみよう、
消費者センターを複数さがしだし、そこで決着をつけることにしよう。
こちらとしてはそうしたいと、不十分ながら取次店に伝えたからだ。
    東京都消費生活センターは新宿にある。
    電話番号は03・3235・1155
    多摩市にだって多摩市消費者センターがある。
    電話番号は042・374・9595

どんな末世にも、人の世には、それなりの是非がある。
消費者センターに相談したとしても、やはり相手の言い分が通ったのかもしれない。
消費者センターが本気になって消費者の立場にたって考えてくれるものかどうか、
けっきょく電話をしなかったから、よくわからない。
私にとっては、人まかせにしたり、相手をやっつけて勝つなんてことじゃなく、
公平な論理が世に出て、それが今でも通用するとわかったことが、まず好ましい。