2013年1月26日土曜日

デン・ハーグでの屈託


私が意気消沈して、成田空港にいたわけはなぜか。
日に日に、それがハッキリしてくる。
国土が放射能づけになり、日本沈没が架空のこととも思われない。
もちろんそれはやっぱり恐ろしい。
しかしそれよりもっとくたびれるのは、
私の場合、わが国の三権分立がガタガタに崩れた、ということではないか。
デン・ハーグで、デン・ハーグだけじゃないけど、
しみじみ思ったことはそれだった。
悲惨や矛盾はどこの国にもある。
しかし私の国では、人権の確立がもうホントないがしろ。
三権分立ってなんだっけと思うほど、ふだんはそんなこと考えないんだけど。

駅を降りてトラムに乗った。
市立美術館に行くという。
ハーグの街なかをガタンゴトンとトラムが走る。
ハーグには飾り窓の家があった。
あそこがそうだし、あそこもそうだ、と娘はいう。
国連関係の建物が多く、しかも国の窓口でもあるから、
住民から、当然、撤退要求が出たんだけれど、
飾り窓側が反撃抵抗、今にいたるもどかないのだとか。
そこで、オランダ国はどうしたか。
私娼窟とは、古来より絶えることなく存在し、世界各国に存在し、
おそらく未来永劫存在し続ける古典的職業ではないのか。
ならば(つまり消滅しないならば)、認めて、
そういう労働?に従事する人間が酷いめに会わないように、自治を保障しよう。
「えーっ、どういうことなの、なんだって?」
娼婦たちには組合がある。
なにか不具合があったら、自分たちの組合で話し合う。
「話し合うの? なにを話し合うの?」
「権利が守られてるかどうか、でしょ」
「それで、どうなるの?」
彼女たちは、ヤクザに支配されることはない。
そういうことだと遥が言った。
「・・・そう?」
いちばんヒドイ目にあいそうな人間をとにかく守るわけなのね?

トラムが壮麗な住宅街を通る。何世紀にできた建築物だろうか。
「あそこにはどんな人が住んでるの?」
「さあ、国連関係の駐在員かな。外国人が多いんじゃない?」
「しあわせねえ。世の中にそういう人がいるのって、不思議ねえ」
どんなに自分のことが自慢だろう、いいなあと思う。

市立美術館で降りる。