2013年1月28日月曜日

アムステルダム 中華街へ


お腹が空いた。
ジャズ・コンサートが始まるまえになにか食べなきゃならない。
けっきょく、遥が仕事をするときいつも利用するという中華料理屋に行く。
「安いよ? おいしくないかもしれないよ?」
「あなたがよく行くところ?」
「うん、手ごろだし気がラクだから」
「じゃそこがいい」
大衆食堂で、わんわんに混んでいる。
カウンターに行列して、あれだこれだと目で見て料理を指定、お金を払うと、
働き者みたいな女や男の給仕が、「これ頼んだのは誰よー」と怒鳴っては客をさがし、
手を上げると、註文した料理を運んでくる。
私はもう、手におえないから遥と健に頼んで、自分はぼーっとテーブルにいた。
ま、なんて雑多な集まりなんだろう。
老若男女、中国、トルコ、アラブ、日本、白人だってもうどこの国の人だかわかんない。
だれもが話しながら、どっさり食べている。アルコールを置かない店である。

中華はおいしかったしまずかった。
私の味覚はずーっとヘンなのだ。病気かなと。
健は、ここの中華がすごく気に入っている。
わたしはオランダのどこでなにを食べても、おいしくもあり、まずくもありで、
それならいっそ安いところがいいわよね。
誰かがよく行くなら、けっきょく雰囲気も味もまあまあなのだ、きっと。

食事が終わって、大きなカフェへ。
おそく出たのにけっこうゆっくりできるもんだと感心してたら、
ジャズ・コンサートに遅れてしまった。
日本のライブ・ハウスのように、観客は立ったままでジャズを聴く。
途中で階段に腰掛けたのもおなじだった。
やわらかな、澄んだ演奏、プレイヤーたちの愉しげな冗談。
初老のギタリストがすごくよかったと健がいう。
のめりこむほどに好きなことがある人は、とりあえず自分が幸せだし、
その幸せがまわりに星屑のように輝いて伝播する、そう思わせるようなプレイヤーだった。
リックさんらしい落ち着いた選択だと思う。

アムステルダムからロッテルダムへ遅くなって帰る。
遥が自転車で、夜中、リックが待っている自分の住いへと戻った。