2011年10月19日水曜日

小さな絵本美術館にて


夏のあいだ、休暇を取らなかった息子を説き伏せて、小淵沢へ。
すこし気分をかえないと、気持ちが開放されないだろう、と思って。

むかしは、原村周辺を出たり入ったりしていた。
八千穂村の村会議員だった友人、東京から移住した母親とふたりの子ども。
白州には従姉夫婦のすてきな別荘もあったっけ、家具工技場つきの。
ああ、十年はほんとうにひとむかしまえ。
現実のことだったと思うことが今となってはふしぎにできない。

はじめて、一番塚をまがったところの「小さな絵本美術館」へ。
月曜日だった。道がわからず到着したのは四時すぎで薄闇のもやがかかるころ。
自動車をおりて、アーチになった門をくぐると、
枯葉でいっぱいの静寂にみちみちた庭づたいに通路があり、
そのむこうにミカンいろのあかりがともる大きな窓、
事務室らしいその部屋には、若い女性がふたりと泣いているあかちゃん。
ふたりがおどろいたように立ち上がって、私たちのほうを眺めている。
あ、人がきた、なんて思ったのだろう、きっと。

フェリックス・ホフマン展(後期)開催中。生誕100年記念。
五時閉館なのでゆっくりはできなかったけれど、
すばらしく美しい絵や版画の数々におどろかされる。
気がつけば、
幼稚園に常備されている「オオカミと七匹の子ヤギ」はホフマンの挿絵なのだ。
「ヨッケリ ナシをとっといで」という絵本と カップ「ヨッケリ なしをとっといで」を買う。
ホフマンはスイス、アーラウの画家である。版画、壁画、ステンドグラス・・・・・・。
そんなことをいえばヘンだろうけれど、ものすごい腕前である。
帰ったらもう一度、絵本をよみなおしてみよう。

美術館の外にでると、ふたり乗りのブランコやハンモックのような遊具、
かしいだ地面をかこむ小川の跡、白樺が夕暮れのなかで、
いま見てきたばかりのホフマンの幻想的な絵のようだ。
なんて素朴で洒落た風情の美術館なのだろうか。

こんなところで育つと、子どもってどんな子どもになるのかなあ、と息子がいう。
うつくしい、童話みたい、きれい、かわいい。わるいものがない。じょうひん。
さーてね・・・・・・。
よく考えてみなくちゃならないわね。