2019年3月6日水曜日

現状認識


かしこくて若い編集者に恵まれたことで、旧作を復刻する仕事は興味深いものに
なった。   
朝日新聞社って複雑で大きな組織だと思う。
ある日は右翼の街宣車が、正面玄関に向かって大音響で抗議を繰り返し、
ああ、これだから制服を着た警備員が何人もいるのかと、気がついたりした。
新聞社は小さな街ぐらいもあって、喫茶店や本屋、レストラン、その他その他が
巨大で頑丈そうなビルディングにのみこまれている。それがとても面白い。
なにしろ、自分は遠い多摩市から「築地市場」駅まで行くのである。

私は老眼のはじまった弱い視力で、手にあまるわが国の現状を見よう、判ろう
としている、そんなことを意識する・・・。

mass communicationとはよくいうマスコミのことだけれど、
大量の情報を流す新聞とかテレビとか。
朝日新聞社に行くと、いわば故郷見学のようで、自分は楽しくてほっとするけれど、
一方で昔ながらのマスコミが、今はスマホに取って代わられて、その凄まじさが
どうにもこうにもおそろしいという気持ちにもなる。
スマホトリビアフォン、スマートでかしこいでんわ。
メールもできて、でんわもできて、ゲームも。
ニュースもわかる、あらゆることを電話の小さな画面で閲覧する。
銀行や税金の操作だってできるらしい。

電車に乗れば向かいの座席の人は全員スマホに取りこまれている。
老いも若きも、働き盛りの中年も、赤ちゃんを連れた母親まで。
魂をうばわれて。

魂。人間からそれが奪われて。
たしかに少し、義務みたいなものを、忘れられるはずのゲームだ。
都市の真ん中は遠い。
私鉄に乗って新宿を歩いて、都営地下鉄に乗って。
旅とも言えない旅の時間が、無表情にかこまれて終わるなんて。