2020年6月10日水曜日

女医さん


久しぶりに病院へ行った。
私のセンセイは女医さんである。
職業柄、怒っている。
「血糖値があがっています。困りましたねえ!?」
なんでこんなことになっちゃったんですかっ! 
こんな数値って考えられません。なにが原因なんですか。
心当たりがありますか?
暴飲暴食のせいだと思うというのが私の考えで、
そう言うんだけど、なぜかバカにした顔でとりあってくれない。
ふふーん、と大きな疲れた目で、私をキッとにらみつけ、
この先生特有の、ためすような表情、
コロナ禍の最中もずっと最前線で患者に対応していたヒトである。
やっぱりえらい。
そう思う。いい人だと私は思い始めている。
「いまでもインシュリンはイヤですか?!」
「すみません、いやです。」
「ふつうの半分ちょっと、それをしばらくやればと思いますよ。」
いまどきのインシュリンは途中でやめてもいいのかと、内心おどろく私に、
「こんな血糖値ですと、コロナにかかりやすいですから」
でも先生、私は気をつけているからコロナにかかりはしませんでした。
と言わないけれど、どうもなんだかだ。


私の「油断」が血糖値上昇の原因 だということで折り合って、
しっかり薬を飲む約束で、家に帰ってきたけど、
そうするんだけど・・・・・・。
途中、自分としては、むかし好きだった古い詩句を思い出した。


   あの女は くたくたになるほど
   わしらの悪口を言った
   あの女は わしらが汗をかくほど
   わしらの悪口を言った
   あの女は 字にはつづれないほど
   わしらの悪口を言った
   あの女は 口には言えないほど
   わしらの悪口を言った
   あの女は わしらが笑い出すほど
   わしらの悪口を言った
   あの女は まる1日と半
   わしらの悪口を言った。
   あの女は 頭がからっぽになるまで
   わしらの悪口を言った
   だが とうとう帆をあげて 行ってしまった

だれだっけ、この詩をつくった詩人は? ミュッセ?
むかし私は、継母のことを考える時、苦しく、この詩を思った。
私の継母はいつも正しい側のヒトだった。
いつも正しい、なんて子どもからみても不公平なのに。
継母は暗い陰気なタイプだったから、この詩とはちぐはぐ、
「帆をあげて行ってしまってくれたら」とこっちが思うだけで、
ユーモラスな結末はのぞめないし、ピッタリこなかった。
でも今日の先生なら、あの女医さんなら 、おなじ無理解でも、上から目線でも、
タイプ確立、堂々ありのままの自己表現、ばかにしたような微笑。
患者がいくぶん努力で笑いたくなるかもしれないほどの・・・。
陰気じゃなくて陽気なんだろうから、
ちょっとこんな詩にちかい風味のタイプかな、と。

私は親の代からの糖尿病で、
コロナ禍にまきこまれでもしたら、危険一番にあげられたりする病気だ。
糖尿病は、まあ、私の病気である。
そこがわかってもらいたいポイントなんだけど。
私は、同じ板の上に載ってるかまぼこの一切れじゃない、
そうは思ってもらえないらしいが、人間って個体だよ。