2020年6月7日日曜日

気になる新聞記事


自分の誕生日にこだわるわけではないが、6月3日の東京新聞の夕刊、5ページ、
「ウィルス禍と文化」は複雑かつユーモラス?な文章だった。
こういう書き方・・しか許されないのが・・新聞のなぜか、だと思う。

中島義道氏は1946年生まれの哲学者。
「哲学塾カント」を主宰し、哲学を志す市民と議論を交わす、という先生だ。
東大大学院出身。ウィーン大学の哲学博士。電通大の教授。
ひょうひょうとした方なんだろうかしら。
著書の題名だって
「うるさい日本の私」「明るく死ぬための哲学」
「ウソつきの構造・法と道徳のあいだ」

おもしろいのは、3日の新聞の文章の見出し。
すごく苦心してるなーと思う。
編集者が?著者が?
どっちがたくさん苦心したのだろう?
     ❶ クッキリ正調テーマ風が「コロナが終息しても人は死ぬ」
       哲学の先生ですもんね。
     ➋ 1番デッカイのが「なんで外に出たがるのか」
       これこそ問題の中心だからか?      
     ❸ 小見出しは3個。
      「死自体の残酷さ」「元気が出てきた」「まかり通る普通」

「まかり通る普通」だけど、最後にひっそり出てくる。
なんでひっそりか? わが日本の、風土病「ペスト」だからだ。
学者もこの風土病には歯が立たない。そう思う。だからひっそり。
 

(中島先生の記述 )
未曾有の災害となると、「普通」がまかり通る。普通の美談がわがもの顔で
のし歩くようになる。みんなが、学校がなくなったことを悲しみ、友達に再会
することを望んでいる、ということになる。
先の戦争のとき、(当時の)普通以外はなにも語らせなかったように、
コロナ大災害においても、普通以外の言葉は封じられるのだ。
普通の苦しみしか認可されないのだ。
(ごもっとも。ははは。でも中島先生のしめくくりはこんなふうなのよね) 
ずっとこんなことばかり考えているのだが、
志村けん氏が死んだと聞いて誰のことかわからなかった。
エンターテイナーと知って録画を見たが、面白さは私には理解できなかった。
それほどズレた老いぼれ哲学者の繰り言と思って聞き流していただきたい。

はてさて。
「なんで外に出たがるのか」は1番デッカイ見出しだが、
この哲学の先生の周囲には、
「引きこもりの若者や、一刻も早く死にたい女性や、逆に死ぬのが怖くてたまらない
青年が群れ集まっている 」
きけばコロナ禍で、
「ええ、不思議なことに元気が出てきました」と青年は言う。
「先生、みんな、なんで外に出たがるのか不思議です」
それが傑作だと先生は書いている。

「外」と青年が言った通りに先生が書くから、こんがらかってしまうけれど、
 主語を取り換えて、
「先生、みんな、なんで学校や会社に行きたがるのか不思議です」
と書けばよいのに。
そう書いたらいわゆる「普通」から、コテンパンにやられるのかしら。

たとえ不思議としか思えなくても、正直な質問疑問が、新聞でちゃんと市民権をもち、
コロナ禍を利用したヘンな政治の歪みと言論の不自由の検討課題になれば、
私たちはみんな、どんなにラクだろう。

と思っても、だれに言っても、新聞なんかに言ってもムダだから、
先生は神出鬼没みたいな表現になるのかしら。

読みにくいけれど、中島義道氏はステキである。
ぜひ見つけて、3日の東京新聞の夕刊を読んでほしい。
哲学入門!