2015年9月8日火曜日

歯医者に行った日


治療中睡魔に襲われ、はい口をもう少しあけて下さいと
何度か言われてしまった。
治療がおわって、先生が私に「ハイッ、よくがんばりました」とおっしゃったけれど、
なんでもタイヘンな、技術的にできるかどうかみたいなことだったらしいので、
本当に頑張ったのは、先生と歯科衛生士の若い人なのだ。
水がシャーシャー、かぎ針みたいな感じのもので奥歯をガリガリ、
それなのに途中私があんまり眠りそうになるので、とうとう口がしまらないように、
木で作った小さな木枕?じゃないけど、口ざわりのよいストッパーを入れられてしまった。
あら、これは木なの、いいもんだな、助かったと思って、
それでまた眠りそうになるのだから、二人ともさぞいまいましかったにちがいない。

麻酔の始まりに痺れるようなクスリが口中に塗布されて、それから注射。
このあたりからもう、私はのんびりしちゃって、なんの心配もしない。
たいした信頼度、である。
歯医者さんに行くのが楽しい人っているものだろうか。
ところが私はここに来ると歯もよくなって、ストレスがじわじわと取り除かれるから、
帰り、元気になって桜上水から上北沢までひと駅、歩いていく。
とぎれとぎれにだけど、好ましい道が三つあるのだ。
子どものころから好きだった路地と家、・・・昔あった家はとうになくなってしまっているのに、
そこに、なぜか、ポツン、ポツンと、何度も見たいとあこがれるような一軒家が建つ。
ぜんぶとはいかないけれど、そういう「小さなお家」に会いに行く。
・・・伝い歩きの楽しみだ。

雨が降って、勉のパン屋まで歩いたらビショビショになった。
でも、私の好きな家には、白い花や青い花が咲いて、雨に洗われているから形も色も美しい。
壁がブルーの家。淡いブルーの外国の小型車が芝生の隣りに嵌め込んである。
車庫は板敷で板はクルマの分しかなく、いったいどうやって車庫入れできたかわからない。
金網に白い芙蓉の大きなひとむらが咲く家は、松の木のせいか暗いみどり。
庭の木々を透かして私は家屋を眺める。今はもう、誰も住んでいないのかしら。
昔からこの家にはそういう話があったなーと思い出すのである。