2020年7月18日土曜日

エッセイを読むたのしみ


公民館ですごく面白い本を手に入れた。100円。
「日本エッセイストクラブ編 / 96年版ベスト・エッセイ集」
それを手にコインランドリイへ。雨続きなので満員だった。
1996年版なので、神戸の大震災について書いている作家が多く、
当時どうしても他人ごとだったものが、コロナ禍真っ最中の今は、
思い当ることも多い。

トップバッターは司馬遼太郎の「本の話」。
こんなに文章がうまい人の後に並ぶなんて、さぞかし恐ろしいだろうと、
ヒトの事でもぞっとした。

それなのに二番手は杉浦昭義という耳鼻咽喉科の先生である。
「世界一の叔母」。叔母さんの?話。しかもきいたこともない人のエッセイだ。
ところが、読めばその叔母は「前畑ガンバレ!」の前畑なのでであって、
日本初の金メダリスト、昔はみんなが教科書で読んだぶっちぎりの歴史的人物。
しかもその叔母の、オリンピック後の話。
話術の天才みたいな文章力にもびっくり、日本一の次だって平気である。

そうだとすると三番手はと、つりこまれてページを繰る。
「震度7の記憶」。書いた人は流行作家藤本義一。
たたみこむような筆致がすごい迫力。
引き込まれるように読んでいたら、こんな記述があった。
コロナ禍にある現在なので、なおいっそうの親近感をもった。
   ー前略ー
   長女の家から戻った午前六時四十分に、わが家の庭に無数の鳥ガ飛来した。
   カラス、スズメ、ヒワ、メジロ、ムクドリ、野バト、ウグイスの番(つがい)
   までやってきた。-中略ー
   鳥ガ飛んできた時、もう此処は安全だと思った。ガス洩れがない 証拠である。
   この知識は五十年前の大阪大空襲の時、親父から教えられたものだ。十二歳の
   頭に入った知識が五十年間生きているのが不思議だった。
 
藤本家のように無数とはゆかないけれど、うちの小さな庭にも鳥は集まってくる。
最近は坂を下って歩き始めると、ウグイスがどこかの木の梢でにぎやかに囀って、
うれしいことである。