2020年7月27日月曜日

「文学フシギ帖」


この本を、どうして持ってるんだろう?
岩波新書。著者は池内紀(おさむ)。 2010年の発行。
やっと思い出す。すこし前に市役所で買った古本なのだ。
100円、というより百円。
副題:日本の文学百年を読む。

きのうからずっと、むかしの各駅に停まる汽車に乗るように、
この本につかまって、ゆっくり文学百年のエピソードをたどった。
(100年前というと1910年、明治が大正にかわる2年前のそんな時)

おもしろかったから、この話を食卓ですると、こうきかれた。
「どの作家の話がよかった」
「・・太宰治かな」
どうしてかって、書き手の池内先生の着眼記述が気に入って。
目次の見出しは、太宰治の「家庭の幸福」。
死後の発表。主人公の名は津島修治(太宰の本名)。
だから、短編のかたちをした遺書なんでしょうね。
作家がポピュラー化してのこした遺書・・・。太宰さんの表の顔と裏の顔。
池内先生によれば、
  
   太宰治の自殺は女性づれのせいもあって、「情死」という情緒的な見方が
   されがちだが、はたしてそうだろうか。戦後の日本人に対する深い嫌悪と
   絶望感に根ざしていたと考えていい。昨日の敵が保護国に早変わりして、
   昨日の神国日本の住民が小旗を振りかざしてアメリカ兵を出迎える。まさに
   模範的な被占領国の誕生である。それもこれもそれぞれの「家庭の幸福」の
   ため。太宰治は、小説をつぎの1行でしめくくった。
   「曰く、家庭の幸福は諸悪のモト」


個人的には、「長谷川四郎と文学風土」とかね。
私は長谷川先生にドイツ語ならったよ桐朋学園で。すごいでしょ。
「堀辰雄とステッキ」もちょっと懐かしい。
堀辰雄がそのむかし肺結核で寝ていた4畳半を借りて、夏休みそこにいたの。
信濃追分の油屋という旅館の離れに。・・・ぼろいぼろい部屋よ。
池澤夏樹さんのお父さんは福永武彦でしょ。その人が歩いてるの見た。
そういう場所だったのよ、追分村は。
高3の時だから。1961年かな。
すごいよね。年よりだよ、わたしはもうまったく!

ステキなのは「五人旅、西遊記」とか、「寺山修司のパロディ」とか。
ぜんぜん作品を読んでないけど「村上春樹の自由 」も。
考えてもみてよ。
20代はじめの北原白秋、木下杢太郎、吉井勇、平野万里が、
与謝野鉄幹に連れられて5人で旅をしたのよ。
詩人のベンキョー五人旅よね。
みんな重たい皮の靴はいて、1か月もね!
北原白秋の22才なんて、洒落た可愛いハンサムったろうね。

わが家の欠点は 、近代日本文学にほとんど縁がないことだ。
私など、ほぼ名まえしか知らないし、息子は私よりチンプンカンプンだろう。
でも、彼は、梶井基次郎の「檸檬」を何回も読んだ。持っているのだ。
すごい。私は読んだことない、有名な本なのに。