2020年1月4日土曜日

童話の時代


ローラ・インガルス・ワイルダーは、
父ちゃんの奏でるヴァイオリンと歌の数々、建国の英雄たちの演説、
宣教師の聖書からの引用 を、いかに多用したか。
著作「シルバー湖のほとりで」(1939年)において。

父ちゃんが奏でる音楽は自由自在、ユーモラスでダンスつきだ。
陽気な恋、開拓時代のむこうみずな魂の輝き、大自然賛美のワクワク。
ロック誕生の、ブルースとの混合を、私などついつい未開の原野に 見てしまう。

英雄の演説を女の子たちが暗誦するページから、読者に届けられるのは、
荒野の脅威に立ち向かうインガルス一家の、敗北からの感動的脱却である。
熱狂的な朗読が開拓精神に気合いを入れるのだ。

そしてある思いがけない1日には、
開拓地に向かう途中の宣教師が、彼の温和で立派な祈祷によって、
人間なるものの未熟さを、確実に主人公に意識させる。

これらは言語の魔法である。
これら四重構造の言葉の魔法にかけられて、若い読者は思だろう。
こんなふうにロマンティックな心を携えて、ヒトの世を渡り歩きたいと。
私だって小さいころ、そう思っていた。

小さいころとは、いつだろう?
私の子ども部屋に「大草原の小さな家」や「長い冬」があったのは?
ローラ・インガルス・ワイルダーは1957年に亡くなっている。

今日の新聞で1月2日、
トランプ大統領の命令で、イラン精鋭部隊司令官が殺害されたと知った。
ニューヨーク・タイムズ(電子版)によれば、
イラクの首都バグダッドの国際空港で、米軍の無人機が車列をミサイル攻撃、
少なくとも3発の精密誘導弾を2台の車に撃ち込み、7人を殺害したのである。

200年がすぎるということは、なんて無惨なことだろうか。

汽車は世界を変える、と父ちゃんはローラに言った。150年も昔のことだ。
それが今では、
アメリカの「無人機」が、ヒトの国の空港にミサイルを撃ち込むのである。