2020年1月22日水曜日

ラスト・ワルツ


「ラスト・ワルツ」とはロックバンドのアルバムである。
誕生日かクリスマスに、長男から届いたプレゼントのDVD。
ロックの、The-Bandの、ラスト・コンサートの、とそれだけで、
お手上げにきまっていると私は思いこみ、放っておいた。
去年の秋、温かい午後の日に、やっと手にとったのである。

息子はふたりともCDとくらしている。私が本無しでいられないのと同じだ。
私は興味があって、無理にも彼らのライブに通ったから、
その15年におよぶ努力?のような道楽?で、
いつごろからか、これはこう思うと言っても、カン違いでもない感じ。
きっとそこらへんで、贈ってくれたんだろうと思う。

なにしろ長男は、私がロックなんか右も左もわからない時に、
自分たちのCDの解説を私に書かせたのだ!?
見当がくるっていても、わけがわかんなくても、かまわないと彼は言い、
なにを要求されているのか、私は書きはしたものの判然としなかった。
とうぜん偽名だった。

さて、マーティン・スコセッシ監督の映画である。

一曲を歌うために集まって来た大物のロック・シンガーたち。
超一流のカメラマンたち、現場監督や、舞台装置家・・・。

このアルバムのために25年後集められた人たちの解説はすばらしい
例えば「トリプル・クリーク」のことだ。
この曲は、幻想のアメリカと真実のアメリカに、聴く人を同時に誘うという。

幻想と真実がであう、という着想は、人類の見はてぬ夢である。
誰もが知っていることだが、この夢はつねに崩壊とセットなのだ。

このDVDの魅力は、なんといっても、そのなりゆきを、
私たちが共有し認識できるように編集されていることだと思う。
もっともそれは、コンサートの熱気から、やっと我に返ってからのことであるが。

  装置につかわれたのは、借り物の、オペラ「トラヴィアータ」の装置と、
  映画「風とともに去りぬ」のシャンデリアだった。
  装置家やカメラマンや演出助手、裏方を引き受けた大勢の舞台人が
  文字どおり一肌脱いだ、ラストワルツの1976年。
  それはアメリカにおいても、
  人類の希望にみちた時代が終わる、崩壊の、時期だったのだろう。

マーティン・スコセッシの絶対的着想と力量がすばらしい。

 The-Bandは、最高のヨーデルをきかせるロックバンドだそうである。
「ラスト・コンサート」は、そのロックバンドのラスト・コンサートだったのだ。