2020年3月14日土曜日

空漠たる


ふと目を上げると牡丹雪が降っている。
手がすいたので、雪をさがして庭を眺めると、雪は雨にかわっていた。
それからこの雨も、いつのまにやら雪にとってかわられて、
ひとひらひとひら鷹揚な、牡丹みたいな御餅みたいな雪になって、
もう一度白く風に追われて行く。
雨と雪と風と、こんな灰色の日も、きれいなものだ。
それから夕方がはじまり夜がやってきたのだけれど、
灰色の雲はいまでは蒼みがかって、屏風のように空漠たる天にいる。

このあいだ、籠浦さんがきた時、うちの玄関で菜の花を見て、
「あ、菜の花だ」と笑った。食べるために買ったんだけどねと私がいうと、
わかりますわかります、と楽しそうにまた笑って、
「安いんですよね、そういうのって」
そうよ100円だったのよ。それでもって、明日食べようと思って飾ったけど、
「うんうん、お花がね、すぐ咲いちゃってね」
身に覚えがあるわけねと笑ったが、こうやってだれかの笑顔が見られるって
嬉しいことだ。第一、共通の話題でしょ。