2020年3月9日月曜日

図書館とはなにか 1


私の家は本だらけで、玄関を入ると左側は天井まで本棚だし、二階に上がると
また一つの壁が天井まで本棚、その前に古いグラグラする小型本棚が立ててあり、
向こう側にも食器戸棚を本棚にしたのが置いてある。
で、みんな読んだかと言うと、半分ぐらいしか読んでない。
自分の家にそれだけあるのに、図書館で借りては読むから、
読まない本はそのままにして、そのうち死んでしまうのだろうと想像する。
そんな暮らしが私には好ましく、自分でも変だーと思いながら時が過ぎた。

このあいだの台風の時、友人の家の地下室が浸水、そこは書庫だったから、
何千冊もの本が水浸しになった。どうにもならず捨てたのだと言う。
そのことをあまりにも彼女が嘆き悲しむので、長距離電話で、
なぜだろうかと考えながら、何度も考えながら、話を聞くことになった。
大量の本。読んだのも読まなかったのもあって、本屋さんを稼業にしていたし、
彼女は作家だから、たださえものすごい分量の本の家、そのまた地下室。
あっても二度と読むはずがない本、全集なんかもたくさんあったと言う。

こんなにも心をはげしく占領する、これほどの悲しみってなんだろうか。
もうトシだし、しばらくすると老人用の施設に行くのだし、そこには本なんか
持っていけない。そう言うそばから、なにかに執りつかれたみたいに嘆く。

なぜかよく理解できず、こんな嘆きがいったいどこからやってくるのか。
それが知りたくて私はずーっと耳をすませていた。