2020年3月21日土曜日

訃報


昨夜おそく、息子たちの音楽仲間がやっぱり急に死んだ、と聞かされた。
癌が3重にも4重にも拡がって、相談先の癌センターにも相談を断られ、
入院先にも見放され、転院先が見つからなかった若者だった。

不可能を乗り越える知恵はないかと、友人たちが集まった日、相談した。
40才になって間もないときけば、結果は決まっているように思えたが、
おなじ死ぬにしても、突破口を探して闘って寿命を延ばしてほしかった。
人生には必ず可能性があり、希望と奇跡があると若い2人に知らせたかった。
その日、うちには賢くて驚くほど柔軟な知恵者がそろっていたから、みんなで
話し合い具体的な方法を考え、メールを病人の恋人に送信してもらった。

やっぱり急に死んじゃったって、あっという間に。
玄関のドアがあいて、そう知らされた時、ドンと風に押されたような気がした。

夜中に眠ろうとして スタンドの電灯を消すと、暗闇はなにかの魂でモヤモヤと
いっぱいだった。それは壊れた家具のかたち、お化けの老人や子ども、不定形の
魑魅魍魎で、かすかに光りながら動ごめいて一向に消えてなくならない。
死んだ人達が、天井までいっぱいなのかと思うから電灯をつけると、雲のような
白いかたまりだけ残して、ほかのものは居なくなる。
ところが電灯を消せばまだそこにみんな居るので、ショウジ君は、よく知らない
私のような者にもお別れにきてくれたんだろうかと、こわくもなくて不思議だった。

ライブハウスでは大勢の若い人にあうので、私は人まちがいばかりした。
青白くて鋭角的な横顔が美しいあの青年には、と思う。小柄な恋人がいた。
すごくいい人だときいていた。
彼はよく勉たちのバンドのDJを引き受けてくれていた。
アサ君のバンドの仲間だった。
あの人はこの人の彼女なのよね、私が用もないのに確かめると、
それはたいていまるっきりの間違いで、ライブハウスの雑踏ばかりが頭に残った。
ざわざわざわ・・・、あさきゆめみし、とはこんな出会いのことだろうかと思う。