2020年3月20日金曜日

シリアの希望


「戦場の秘密図書館」を読んでいる。
シリア内戦下の、反体制ダラヤの物語りである。
アサド政権下、政府軍に完全封鎖され、絶え間ない空爆にさらされ、
あらゆる物資が封鎖で届かなくなったダラヤの街の、
危険な瓦礫の下に、密かに創られた図書館と書物と、
少年といってもよいような若者たちの物語だ。

「読書を通して、過去の歴史を学ぶと、『前進し続けよう』という気持ちになります。
たとえば国家にさからってまで何かを成しえた人物の話を読めば、『ぼくたちにだって
出来る』と力がわいてきます。ぼくたちが目指しているのは、アサド大統領を権力の座
から引きずりおろすことだけじゃないんです。それ以上のもの、つまり、自由な国家が
ほしいんです。だからぼくたちは、アサド大統領がいなくなった後の、新しい国作りに
備えなきゃいけない。読書によってしか、それはできない。いや、読書することで、ぼ
くらはそれを成しとげられると信じているのです。」 ウマル

「ぼくは思うんです。本は雨のようなものじゃないかなって。雨はすべてのものに分け
へだてなく降りそそぎます。そして、雨の降りそそぐ土地に草木が育つように、本を読
むことで人間の知恵は花開くんです。」 バーシト

 2016年 ダラヤ陥落。ダラヤ市民は4年近く抵抗を続けた街を追われた。
秘密図書館は政府軍に荒らされ、本は略奪され、時々市場で売物になった。
もとの所有者の名まえと住所が記録されているために、略奪が判明するのだ。

本は雨のような存在だとダラヤを追われた別の若者も言っている。
雨が降れば、草木も花もいろいろなものが育ちますとインタヴューにこたえて。
「秘密図書館の本も、たどりついたそれぞれの場所で、誰かに読んでもらい、読んだ人
が知識を得て、その人の心が育つことを願っています。それが巡り巡って人類の成長を
助けるのです。ぼくたちはいつまでも秘密図書館を誇りに思い、秘密図書館が良いもの
の源(みなもと)でありつづけることを信じています。」 アナス